研究課題/領域番号 |
19K11315
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
山辻 知樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40379730)
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研究分担者 |
石田 尚正 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80805896)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | サルコペニア / 消化器がん / リハビリテーション / 栄養療法 |
研究実績の概要 |
サルコペニアは進行性かつ全身的な筋肉量の低下に伴う筋力や身体機能の低下状態を示すが、単に加齢に伴う現象でなく、様々な要因によって引き起こされる。消化器がん患者のサルコペニアは外科治療後の独立した予後増悪因子であることが報告されている。 本研究は、サルコペニアをもつ消化器がん患者に対して、適切な栄養療法とリハビリテーション、運動療法を行うことにより、周術期合併症を予防しQOLを改善し、がんの予後改善を目指す。 食道がんや胃がんなどの消化器がん患者を対象にBIA法を用いた体成分分析装置InBodyを用いて非侵襲的に筋肉量を含む体成分分析を行い、安全かつ有用な周術期管理の指標となり得るかを検討した。 初診時にサルコペニアと診断された成人上部消化管がん患者に対して、サルコペニアの程度を周術期に評価し、合併症・病期などの記録を行い、理学療法士による周術期リハビリテーション介入を行い、NST(栄養サポートチーム)の介入により、適切な栄養管理を行った。 本実績報告書作成時点において、消化器がん患者30例(平均72.2歳,食道がん20例、胃がん10例)に対して評価を行った。消化器がん患者の術後平均SMI(骨格筋量指標)は術前に比して減少していることが明らかになり、手術侵襲によるサルコペニアの増悪が推定された。術後栄養療法およびリハビリテーション介入による骨格筋量改善評価、QOLおよび合併症評価を行った。現在、術前リハビリテーションプログラムと栄養管理指標についての検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
InBodyを用いて食道がんや胃がんをはじめとした上部消化器がん術前患者に対して体成分測定を行い、理学療法士による術前リハビリテーションや管理栄養士に よる栄養評価も行った。リハビリテーションセンターで握力や歩行スピードも同時に測定し, サルコペニアの評価を開始し、現在患者への適切なインフォームドコンセントを行い、初期評価を行った。実際の体組成やサルコペニア評価に関わる測定を安全に行う環境整備を継続した。 2020年には、新型コロナウイルス感染蔓延のため、ほぼ全ての対面診察および外来リハビリテーションが制限されることとなった。感染防御対策を慎重に行うため、サルコペニア評価に必須の体組成測定や患者指導に多くの人的資源と時間を割く必要があり、症例新規登録が大幅に遅延した。1名の消化器がん術前患者に研究参加の同意を得た。内訳は食道がん4名、胃がん1名、男性:4名、女性:1名、平均年齢:80.8±5.4歳である。外来においてサルコペニア基準である筋量、筋力、身体機能低下を評価したところ、サルコペニアと診断された患者は2名であった。術前外来にてリハビリテーションを導入し、術前に介入効果について再評価を行った。研究②サルコペニア改善を目的にした在宅リモートリハビリテーションプログラムの導入:術前にリモート形式のセルフエクササイズの介入期間を2週以上確保できる患者については、在宅でのリハビリテーションを実施し、患者との双方向対話によってフィードバックを行い、術前運動プログラムおよびその運動の安全性および忍容性の解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
報告書作成時点で、新型コロナウイルス蔓延に伴う感染予防対策は大幅に緩和され、今後は外来における対面式のリハビリテーションや外来診察や、サルコペニアの評価も安全に進めることができるようになると思われる。さらなる症例の蓄積と共に、遅れていた評価項目の再検討及び予後評価も進めている。 現在安全な在宅リハビリテーションの方策を検討する時代の到来を踏まえて、インターネットを用いた在宅リハビリテーションプログラムの導入を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本外科学会総会をはじめ、多くの学会が新型コロナウイルス蔓延のため延期あるいはWEB開催となり、当初旅費として計上していた研究費が使用できなくなった。また、リハビリテーション部門や外科外来において、患者やスタッフに対する感染防止安全策を行うために、研究補助作業が倍増し、人件費が増加した。外来で対面式の指導が困難となったために、患者の登録をはじめとした研究計画そのものに遅延が生じ、現在在宅リハビリテーションプログラムの導入を開始した。以上よりやむを得ず次年度使用額として研究費を計上させて頂くこととなった。次年度の使用額は通信機能の付帯したタブレット端末(iPad)および通信会社とのリモート通信契約費用である。
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