研究課題/領域番号 |
19K11324
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
福永 道彦 大分大学, 理工学部, 准教授 (90581710)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 筋冗長性問題 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,冗長に設計されている筋が運動中にどのように力を発揮しているか,人為的な仮定を用いず,脳神経系の構造と類似している人工ニューラルネットワークに解かせることによって,運動中の筋発揮戦略について検討することであった. まずは,計画通り,最もシンプルな対象として,下肢でエルゴメータのクランクを回転させる二次元,一自由度の力学モデルを構築した.実際のエルゴメータと同じく,両脚で,位相が180度異なるペダルを漕がせるものとした.筋モデルは粘弾性を含むものとした.大腿まわりの6筋で股関節および膝関節を駆動した.逆動力学問題の解法は,人工ニューラルネットワークによる推定とした.関節角度,角速度および足先に発揮する力の大きさと向きを入力値とし,6筋それぞれの筋発揮率を出力するものとした.教師データは,クランク角度および角速度を乱数として作成した.また,外乱に対応するために拮抗筋が働くという仮定のもと,教師データの足先発揮力に乱数を加えて作成した推定器と比較した. その結果,すべての筋力が周期的に発揮された.また,教師データの作成時に足先発揮力に外乱を加えた場合には,筋出力の振幅が小さくなり,結果として拮抗筋の同時発揮が見られた.この外乱を大きくするほど,筋出力の振幅は小さくなった.ニューラルネットワークの筋発揮は,結果だけ見れば案外とシンプルな戦略に則っており,必ずしも物理的に合理的にみえる仮定が妥当ではない可能性が見えたが,詳細は今後の検討課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二次元のペダリングモデルでの筋出力最適化について,9月頃に結果を得ることを計画していたものの,力学モデルの妥当性の確認や筋モデルおよび神経モデルの構築に想像していたより時間を要し,年度末でようやく結果が出始めたところである.
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今後の研究の推進方策 |
やや遅れてはいるものの,研究の方針どおりには進んでおり,今後も当初の計画通りに進めていく.二次元の歩行動作,二次元膝モデルの導入が次の課題である.しかるのち,筋骨格モデルを三次元化し,膝の関節面や軟組織を含むモデルへと拡張していく.また,筋出力の測定実験についても実施し,モデル解析の妥当性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画初期におけるシミュレーションで,モデルの構築に時間がかかり,実験の準備に取り掛かることができなかった.研究の進行が遅れたために使用も遅れたものであり,次年度以降,計画どおり,測定実験に使用する予定である.
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