研究課題/領域番号 |
19K11326
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
村田 嘉利 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (80444925)
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研究分担者 |
西村 行秀 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20464117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 義足 / 駆動義足 / 健足同期 / 歩行 / アシスト / 歩行障害 / SACH / 踵 |
研究実績の概要 |
下肢切断者にとって義足は生活の質(Quality of Life QOL)の向上のために必須である。高機能駆動義足は、健常者に近い歩行を実現可能にしている。しかし、海外の限られたメーカのみから提供されており、非常に高価である。その上、保険適用外であることから、一般の下肢切断者が利用することが難しいのが現実である。提案義足は、「健常者における左右の足は半周期の違いはあるが基本的に同じ動きで歩行する。」ことに着目し、健足の動きをセンサでモニタリングし、駆動義足の動きを制御するというシンプルな制御になっている。また、足部の上下動に工業用の小型シリンダモータを利用することで、低コスト化をめざしている。2019年度は、歩行時の左右の動きの分析を行い、直進だけでなく左右の旋回時においても左右の足が同じ動きをしていることを確認した。また、工業用小型シリンダモータを利用した義足の甲部分を上げ下げするInstep Push/Pullユニットを組み込んだ駆動義足を試作し、その特性を評価した。残念ながら、テストしたモータの駆動力が弱く、モータを変更する必要があることが判明した。その内容を国際会議ITU Kaleidoscope 2019およびIARIA, eTELEMED 2020に投稿し,Proceedingsに採録された。 踵上げをアシストするHeel-up springユニットについては、バネ定数の異なるものを複数試作し、障がい者の体重と筋力アシストに最適なバネ定数の関係について評価実験を行い、正の相関があることを明らかにした。また、今回試作したものでは、歩行姿勢に影響を与えないことを確認した。その内容を国際会議IARIA, eTELEMED 2020に投稿し,Proceedingsに採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
応募時の計画では、2019年度は、Instep Push/Pullユニットの第1次試作を行うと共に、2018年度に試作したHeel-up springを利用し、障がい者の体重と筋力アシストに最適なバネ定数を明らかにすることを目指していた。健常者を中心に評価を行い、国際会議(eTELEMED 2020、他) への投稿・発表を計画していた。ほぼ計画通りの進捗となった。 Instep Push/Pullユニットを組み込んだ駆動義足を試作し、評価した。その結果、駆動力不足であることが判明した。また、提案駆動義足の基本アイデアである「『健常者における左右の足は半周期の違いはあるが基本的に同じ動きで歩行する。』ことに着目し、健足の動きをエミュレートするように義足を制御する。」が正しいかを検証するため、直進だけでなく左右の旋回時における左右の足の動き(3次元の加速度データと角速度データ)を計測し、左右の足がほぼ同じ動きであることを確認した。それらの実験結果をまとめ国際会議ITU Kaleidoscope 2019およびIARIA, eTELEMED 2020に投稿し,Proceedingsに採録された。 Heel-up springユニットについては、バネ定数の異なるものを複数試作し、障がい者の体重と筋力アシストに最適なバネ定数の関係、および歩行姿勢に与える影響について評価実験を行った。その結果、体重と筋力アシストに最適なバネ定数の間には正の相関があることを明らかにした。また、歩行姿勢には影響を与えないことを確認した。その内容を国際会議IARIA, eTELEMED 2020に投稿し,Proceedingsに採録された。それと並行し、圧縮されたコイルスプリングの解放タイミングを遅延可能な機構を考案し、金属3Dプリンタを利用して試作した。
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今後の研究の推進方策 |
応募時の計画に基づき、2020年度は、Instep Push/PullユニットおよびHeel-up springユニットを義足向けに最適設計する。Instep Push/Pullユニットについては、計測した小型シリンダモータのトルク不足であったことから、新たなシリンダモータを捜し、変更する。その上で、健足側の靴の踵に角速度センサを埋め込み、そのデータに基づいて義足を制御する機能を組み込む。健足側の計測データは、Bluetoothを経由して義足の制御部に送ることを想定している。脚部切断者の協力を得て評価実験を行う。評価実験に当たっては、研究分担者である岩手医科大学・西村教授および研究協力者である義肢装具製作所・岩手テクノの牛崎氏と一緒に進める。 Heel-up springユニットについては、圧縮されたコイルスプリングの解放タイミングを制御しなくても最適なアシスト効果を得られると共に歩行姿勢に影響を与えないことが明らかになったことから、タイミング制御機能を導入しないこととする。タイミング制御機能の無いHeel-up springユニットを義足の踵部に取り付け、性能評価を行う。その際、現状のHeel-up springユニットは、金属がむき出しになっていることから、左右に曲がる際に、コイルスプリングを固定しているステンレスの板が床に引っ掛かり易く、見た目も良くない。その対策として、革のカバーと床に接地する面に靴の踵素材を付ける予定である。なお、2019年度に圧縮されたコイルスプリングの解放タイミングを遅延可能としたHeel-up springユニットを試作していることから、その性能評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの国際的感染拡大のため、投稿した国際会議が延期になった。そのための旅費が支出されなかった。なお、国際会議は延期となったが、Proceedingsは予定通り2019年3月に刊行された。 また、Instep Push/Pullユニットを組み込んだ義足を研究協力者である岩手テクノが無料で作成していただけたため、物品費の支出を抑えることができた。
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