本研究の目的は、喉頭表面筋電図を用いて発声障害患者にみられる喉頭周囲の過剰な筋活動を音響、表面筋電図にて同一時間軸上で測定し、異常音声の発現に至る運動調節の障害を明らかにするとともに、表面筋電図を用いたバイオフィードバック訓練の治療効果について検討することであった。 当初の計画では、医療機関を受診した過緊張性発声障害患者または痙攣性発声障害患者(疑いも含む)を対象に、喉頭表面筋電図による筋活動と音声サンプルの収集を予定していた。しかし、2020年から日本でもCOVID-19が長期間にわたって蔓延し、飛沫感染のリスクを考慮して発声を伴う本実験は2023年まで延期していた。また、研究代表者の所属施設の診療体制の変更に伴い、発声障害患者の新規受け入れが中止となったことも重なり、最終的に発声障害患者でのデータ収集は研究期間内に行えなかった。これに代わる実験として、研究代表者の所属先で健常者を対象とした予備実験を計画・一部実施し、データ収集を行った。その結果、女性を被検者とした場合、舌骨下筋群(標的筋は胸骨舌骨筋)の最大随意収縮は、Shaker法では適切に誘発できない場合があることが明らかになった。また、実験中の肢位について、課題文を音読する際に、視線の移動に伴う頭部の前後・上下方向への運動を抑制するための実験環境を十分に整えることができなかった。 研究期間は終了したが、これまでの予備実験から得られた課題を整理し、引き続き発声障害患者における病態解明と治療効果の検討を行う予定である。
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