研究課題/領域番号 |
19K11329
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
竹内 伸行 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20587076)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー / 疼痛 / 圧痛 / 神経 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、その前年度から開始していたレーザー照射部位と離れた部位の疼痛閾値に対する効果(conditioned pain modulation[CPM]効果)を主に検証し、一部の成果を報告することができた。一側前腕掌側に出力10Wのレーザーをパルス照射し、対側同部位のpressure pain threshold(PPT)、電流痛覚閾値を測定した。レーザーを照射する照射群とsham照射する対照群を設定し、照射前後の実測値を用いた前後比較に加えて、変化量を算出し群間比較を行った。結果、照射群のPPTは照射前に比して照射後に有意な高値を認めたが、対照群のPPTは照射前後で有意な変化を認めなかった。加えて、変化量による群間比較では、対照群に比して照射群で有意な高値を認めた。電流痛覚閾値は両群ともに照射前後の有意な変化を認めず、変化量の群間差も認めなかった。これらのことから10Wレーザーのパルス照射によって、PPTに対するCPM様効果の発現が示唆された。一方で、電流痛覚閾値の変化を認めなかった。PPTは受容器を介する侵害受容性神経活動を反映するが、電流痛覚閾値は受容器を介さないAδ線維の活動を反映している。詳細は更なる検討が必要なものの、本CPM効果は受容器を介した侵害受容性神経活動に効果を示す可能性があると示唆された。この成果に加えて、本研究課題の副次的課題としている180mwのレーザーにおけるCPM様効果も検討し、同様の効果が得られる可能性があることを報告した。さらに、前年度から継続して検討している生体内散乱光強度の計測結果については、10Wレーザーに加えて、出力180mWのレーザーについても学会発表を行うことができた。なお、これらの研究で得られたデータから、副次的成果として、PPTと電流痛覚閾値および電流知覚閾値の関連性を検討し報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度までに実施してきた、レーザー照射部位のpressure pain threshold(PPT)や電流痛覚閾値に与える効果の検証に加えて、令和4年度は照射部とは異なる部位に生じるconditioned pain modulation(CPM)様効果を検討することができた。さらに、生体内におけるレーザー光の散乱の程度を、出力の異なるレーザー治療器で検証することができた。これらは、単にレーザー照射による疼痛緩和作用を検討するのみにとどまらず、既存のレーザー照射方法の再検討や、レーザー療法の新たな臨床的活用につながる成果であると考えている。このように当初の計画では含まれていなかったが、本研究課題をより深く考察するうえで必要な検討項目を実施することがきたことは有益であったと考える。さらに、令和4年度後半からは、レーザー照射による深部組織温の変化の検討を始めることができた。新型コロナウィルスの影響により研究遂行が中断した期間も生じたが、これらの理由により本研究課題は概ね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、前年度から継続しているレーザー照射による深部組織温の変化について、出力10Wのレーザー治療器で検討すると共に、出力180mWのレーザー治療器においても同様の検討を開始する予定である。より低出力な180mWのレーザーによる同様の検討を行い、その結果を合わせて考察することで、高強度パルスレーザー照射による効果検証がより深まるものと考えている。また、令和4年度までに得られた研究成果である、レーザー照射部で生じる疼痛緩和作用と、レーザー照射部とは異なる部位で生じるconditioned pain modulation(CPM)様効果について、出力10Wのレーザー治療器の成果に加えて出力180mWのレーザー治療器についても論文発表の準備を進める予定である。さらに、生体内散乱光強度の検討結果は、これまでにも学会発表してきたが、一部の結果は解析できていない状況にあるため、これらの成果についても学会および論文にて発表する準備を行う予定である。なお、本研究課題を発展的に継続していくために、神経線維の違いに着目したレーザー照射による疼痛緩和作用の検討も開始したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、新型コロナウィルスの影響により研究実施に一部遅れが生じた(全体としては概ね順調であると考えている)。本研究課題は主に医療機関を研究フィールドとして実施しているが、新型コロナウィルスの感染状況が拡大した期間は研究の中段を強いられた。また、参加予定であった学会等も当初の計画よりは限られたものとなった。これらの理由により、次年度使用額が生じたものである。次年度使用額については、これまでの研究成果について、学会発表や論文発表を行うための関連費用として支出予定である。
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