研究課題/領域番号 |
19K11330
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 春彦 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30274062)
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研究分担者 |
白石 俊彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (30361877)
二瓶 美里 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20409668)
井上 剛伸 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究部長 (40360680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超重症児 / コミュニケーション / パターン認識 / 行動記録 |
研究実績の概要 |
超重症児の多くは発話がないうえ、表情も乏しく、感情を推し量るのが難しい。本研究では、超重症児が出すわずかなサインを見逃さずコミュニケーションを可能にするシステムの構築を目指している。今年度は予備的研究として、超重症児の協力を得て、生体信号からどこまで感情を識別できるかを検証した。対象は10歳の脳性麻痺を持つ男児で、粗大運動機能レベルGMFCSは最重度のⅤ(寝たきりレベル)、気管カニューレを装着し、頻回に痰の吸引を行っている。コミュニケーションレベルはCMFCSで最重度のⅤ(保護者とも意思疎通が困難)であった。この対象児が通う療育施設での理学療法場面において、理学療法士とのやりとりを中心に約1時間、複数のカメラで記録しつつ、ウェラブルセンサにて生体信号も同時に記録した。記録した信号は、心電図、指の屈筋と膝の伸筋の筋電、体幹、前腕、大腿の加速度であった。記録された動画を再生し、本人の表情、本人と理学療法士のやりとりなどから、周囲に関心を向けているか否かを10秒間のシーンごとに一人の検査者の主観で判別した。また、生体信号は、心拍数、心拍間隔、手や足の反応の有無と大きさを同じく10秒間ごとに抽出し、動画から推測された関心の有無と照らし合わせた。その結果、本人が苦痛を感じているような場面、例えば、拘縮した関節のストレッチの場面は「関心有り」と判別され、同時刻は心拍間隔が縮小するという対応が見られた。「関心有り」と判別された時間帯と「関心がない、わからない」と判別された時間帯の心拍間隔の平均値を比較すると、関心ありと判別された時間帯の心拍間隔は有意に縮小していた。よって、心拍間隔は対象児が周囲に関心を示している(反応している)ことを表す指標になりえると思われた。今後はビデオ画像による感情評価を複数の検者で行い信頼性を確認し、心拍以外の指標、呼吸の深さなどを抽出し喜怒哀楽の推定を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者から計測に対する同意を得ても、緊急事態宣言の発令により出張が制限され、対面で計測、情報を収集する機会が失われているため。
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今後の研究の推進方策 |
緊急事態宣言など、移動や対象児との面会の制限が解かれた後は、研究協力者に対する計測を再開する。また、現在保有しているデータについても再検討を行い、気持ちの推測につながるような生理指標(特定の筋の収縮や呼吸数など)の抽出を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による出張取り止めの影響により、予定していた旅費等が発生なかったため。未使用額は、より重症な対象者に適応できる生体情報収集機器の購入に充当する。次年度の早期に購入し計画を進める。
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