片側大腿切断者において観察される左右非対称な歩行は、一側肢への過負荷蓄積を通じて筋骨格系障害の潜在的リスクとなる。本研究の目的は、様々な歩行速度における Loading Rate(接地初期における鉛直地面反力の時間変化率)を片側大腿切断者から大規模に計測し。その関連因子を解明することであった。本年度はこれまでに取得した片側大腿切断者25名分のデータ(時速2.0 km/hから5.5 km/hまでの8段階速度で計測)を利用し、歩行時の前後・左右・鉛直地面反力を、健常者と横断的に比較する解析を行った。その結果、非切断側における鉛直地面反力の第1・第2ピークが、顕著な速度依存性を示したのに対し、義足側の鉛直地面反力第2ピークは常に一定の値を示した。これは片側大腿切断者における歩行の特徴として、立脚期後半における義足側の蹴りだしが不十分なため、非切断側の着地時Loading rateが高くなるという、昨年度までの結果を支持するものである。加えて、同様のデータセットを用いて、身体重心モデルによる外的仕事量も算出・比較を行った。その結果、非切断側の外的仕事量は歩行速度に応じて変化したのに対し、義足側は常に一定値を示す傾向にあった。さらに、こうした左右脚で非対称な外的仕事量は、電子制御膝継手を使用することで、緩和される傾向にあった。以上のことから、片側大腿切断者における歩行時の着地衝撃は、立脚期後半で生じる義足側の出力不足を非切断側が補うことで生じているであろうこと、そしてそれは義足パーツを適切に選定することで緩和できる可能性が示唆された。
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