研究実績の概要 |
本研究では、大規模集団の認知症高齢者の手指運動巧緻性を、指タップ運動を用いて計測し、認知症患者の手指運動巧緻性の低下を捉える検出度の高いパラメータを抽出する。また、手指の運動を地域高齢者の認知症のスクリーニング評価に使用することを想定し、より妥当性の高い最適なカットオフ値を設定するのを目的としている。 選択基準は、AD、MCIの診断がついた60歳以上の右利きの患者で, 研究方法を十分に理解できる患者とした。除外基準は、意識障害、振戦、失語症や失行症などの高次脳機能障害, 麻痺や感覚障害, 手指巧緻性障害を呈する者とした。なお、確定診断に迷った場合は、認知症の専門医によるカンファレンスにて協議し、診断を確定した。現在、アルツハイマー病患者(AD群)180名、軽度認知機能障害患者(MCI群)211名、健常高齢者(control群)280名の計測を終えた。 中間解析を実施。MCI群とcontrol群のパラメータの比較では、両手交互のタップ回数で効果量が大きかった(p<0.0001, r = 0.51)。また, リズム(p<0.0001, r = 0.45)、リズムのばらつき(p<0.0001、r = 0.43)、すくみ回数(p<0.0001、r = 0.41)といったパラメータでも、r > 0.4以上と効果量は中等度に高かった。カットオフ値について、ROC分析を行った結果、タップ回数のカットオフ値は30回、感度0.769、特異度0.665、AUC 0.79であった。 今後は、引き続き計測をすすめ、カットオフ値の妥当性の検証をする。
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