研究課題/領域番号 |
19K11345
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小野 玲 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (50346243)
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研究分担者 |
牧浦 大祐 神戸大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (40813944)
井上 順一朗 神戸大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (50437472)
酒井 良忠 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (90397802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢がん / サルコペニア / フレイル / ロコモ |
研究実績の概要 |
本邦でがんは死亡原因の第1位であり、その7割以上が65歳以上の高齢者である。高齢期にはサルコペニア・フレイと言った脆弱な状態が問題となっているが、高齢がん研究において治療前のサルコペニア・フレイルが運動機能低下や生命予後に関係するという報告は散在するも、治療後の(アウトカムとしての)サルコペニア、フレイルの有病率や関連要因は明らかでない。本研究課題の目的は、①根治療法後のサルコペニア、フレイルの有病率とがんを罹患していない同年代の高齢者の有病率を比較すること、②根治療法後のサルコペニア、フレイル発生とがん治療、退院後の生活習慣との関係を明らかにすることである。 2019年度は研究計画に順次、根治療法後患者のサルコペニア・フレイルを比較するための地域在住高齢者のコホートを設定し、測定を行った。対象者は65歳以上の高齢者のうち、2019年度の特定健診を受診し、同意を得た2,283名(女性1,178名、平均年齢72.3±4.6歳)であった。質問紙にて、がんの診断の有無、診断からの年数について聴取した。ロコモ25にて16点以上の場合にロコモあり、Geriatric Depression Scale(GDS)にて5点以上の場合抑うつありと判定した。高血糖(HbA1c >=6.5%)と腎機能低下(eGFR <45mL/min/1.73m2)は特定健診時の生化学データから判定した。がんの診断を受けていたものは224名(9.8%)であった。ロジスティック回帰分析の結果、高齢がんサバイバーはロコモの割合が高く(オッズ比1.8、95%信頼区間1.2―2.7)、腎機能低下の割合が高かった(2.1、120-3.7)。 本研究結果は、地域在住高齢者においてがんサバイバーの有病率を明らかにし、高齢がんサバイバーの特徴を明らかにした初めての取り組みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前科研課題で行った根治療法後の既存コホートを使用して、追跡調査を行う予定にあたり、研究課題が2次利用であるため、倫理委員会に研究計画を申請する必要があった。 しかし、研究者間で調査内容の調整に時間を要したため、2019年度に倫理委員会からの許可を得るに至らなかった。 許可を得次第、既存コホートに関して追跡を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、①根治療法後のサルコペニア、フレイルの有病率とがんを罹患していない同年代の高齢者の有病率を比較すること、②根治療法後のサルコペニア、フレイル発生とがん治療、退院後の生活習慣との関係を明らかにすることである。 2019年度は地域在住高齢者の研究において、高齢がんサバイバーの特徴が横断的に明らかとなった。しかし、これは自治体主催の特定検診を対象としているため、セレクションバイアスがかかっている可能性がある。 今後は、既存の根治療法後のコホートから追跡調査を行い、サルコペニア・フレイルの発生を追跡するとともに、地域在高齢者からマッチングさせた高齢者を抽出し比較することにより、本研究課題の目的を達成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は倫理委員会の承認を得れていなかったので、既存コホートを対象に調査ができなかったため、印刷や郵送にかかわる費用が計上できなかった。2020年度は倫理委員会の承認後、速やかに調査を開始し、予算を執行する予定である。
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