研究実績の概要 |
本邦を含め先進各国では高齢がん患者が増加しており、治療成績の向上が喫緊の課題である。高齢がん患者の治療成績(アウトカム)は生存期間だけでなく、健康寿命の延伸も重要である。高齢がん患者において、がん治療によって治療後に健康寿命の延伸を阻害するサルコペニア、フレイルが誘発されていると考えられるが、頻度や要因は明らかになっていない。 本研究の目的は、高齢がん患者の治療後のサルコペニア、フレイルの有病率とがんを罹患していない同年代の高齢者の有病率を比較すること、サルコペニア、フレイル発生とがん治療や退院後の生活習慣との関係を明らかにすることである。 地域在住高齢者を対象とした健康調査では、2,283名(女性1,178名)のうちがんの既往歴のある高齢者は224名存在した。高齢がんサバイバーはがん罹患の既往のない高齢者と比較して、ロコモ度が高く、腎機能が低下していた。 医療介護レセプトデータでは、2014年から2018年に国民健康保険又は後期高齢者医療制度に加入していた住民(n=163,697)を対象に、高齢期のがん罹患と要支援・要介護の発生を調査した。追跡期間中にがん罹患をしたのは16,088名で、プロペンシティースコアマッチングにより抽出された非がん罹患者と比較して、Cox比例モデルを行った結果、ハザード比は1.49であった。 本研究課題から、高齢がん患者は治療後にロコモ度が高く、要支援要介護認定が発生しやすいことが明らかになり、がん治療終了後も介護予防の観点から、積極的な運動介入の必要性が示唆された。
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