| 研究課題/領域番号 |
19K11347
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| 研究機関 | 長崎大学 |
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研究代表者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
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| 研究分担者 |
本田 祐一郎 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (40736344)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 慢性疼痛 / 変形性膝関節症 / 歩行運動 / 予防 / マクロファージ |
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| 研究実績の概要 |
本研究では，変形性膝関節症（以下，膝OA）発症前ならびに発症後早期から実践する継続的な運動による慢性疼痛の予防効果とその生物学的メカニズムについて検討することを目的にしている．そこで，今年度は，発症前に実践する継続的な運動の効果とそのメカニズムについて検討を進めた．
実験動物には，Wistar系雄性ラット31匹を用い，1）6週間通常飼育した後に，モノヨード酢酸を右膝関節腔内に投与することでOAを惹起し，その後6週間通常飼育するOA群，2）6週間トレッドミルにて歩行運動を実施した後にOAを惹起し，その後6週間通常飼育するWalking exercise（WE）群，3）6週間通常飼育した後に生理食塩水を膝関節腔内に投与し，その後6週間通常飼育するSham群に振り分けた．実験期間中は経時的に膝関節の圧痛閾値を評価した．また，実験開始時および運動期間終了時，実験終了時には採血を行い，血清中のIL-10含有量をELISA法にて測定した．そして，実験終了後には滑膜におけるマクロファージの動態を免疫組織化学的染色にて評価した．
その結果，膝関節の圧痛閾値は，OAを惹起した実験開始7週後以降をみると，OA群とWE群はSham群と比べて有意に低値を示し，この2群を比べるとWE群がOA群より有意に高値を示した．血清中のIL-10濃度はいずれの時点においても3群間に有意差を認めなかった．一方，滑膜におけるマクロファージ数については，WE群とOA群はSham群より有意に高値を示し，この2群を比べるとWE群はOA群と比べて有意に低値を示した．
以上の結果より，継続的な歩行運動を実践すると，OA発症後の痛みを軽度に抑えられる可能性が示唆され，これには滑膜炎を軽度に抑えられることが関与していると推察される．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は，継続的な歩行運動の実践が膝OA発症後の痛みにおよぼす影響とそのメカニズムについて検討を進めた．その結果，膝OA発症前から継続的な歩行運動を実践しておくと，発症後の痛みが軽度となり，滑膜におけるマクロファージ数が減少するといった結果が得られている．つまり，これらの結果は，継続的な歩行運動が膝OAに起因する慢性疼痛の予防戦略になりうる可能性を示唆しており，その生物学的メカニズムとして，滑膜におけるマクロファージの動態が関与している可能性を示唆しているといえる．これらの結果は当初の計画通りに研究が進展した成果であると考えている．
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの実験では，膝OA発症前の継続的な歩行運動の生物学的メカニズムについて，膝OA発症早期から滑膜炎が軽度に抑えられているのかが明らかではなく，また，このようなマクロファージの集積を抑制するメカニズムについても検討できていない．一般に，マクロファージは炎症性（M１）マクロファージと非炎症性（M2）マクロファージに大別され，それらの動態が組織の炎症や痛みに影響していることが明らかにされている．また，これらのM1マクロファージはINF-γによって分化誘導され，一方，M2マクロファージはIL-4などによって分化誘導されることが知られている．そこで，今後はこれらの炎症性サイトカインや非炎症性サイトカイン，M1・M2マクロファージの動態について検索を進めていく予定である．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度では，二次予防戦略としての膝OA発症後に実践する継続的な筋収縮運動の効果検証に関する予備実験を進める予定であったが，この点については翌年度以降に実施するよう変更したため使用額に変更が生じた．変更が生じた額について，ラットの購入費として使用する予定である．
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