研究課題
神経筋疾患患者らの生活の質の向上を図ることを目的として、本研究では、生体信号(筋電信号と脳波)を活用してニューロリハビリテーションを行うための上肢運動支援システムの検討を行っている。2020年度には、以下に示す研究成果が得られた。1. 筋電信号の増幅や前処理を行うための2チャンネル筋電コントローラを作成し、健常被験者2名の前腕部から導出した筋電信号をコンピュータに入力して、LSTM判別器を用いた場合の判別率を調査し、2名とも90%以上の判別率が得られた。また上肢義肢の評価テストの一つであるSHAPを用いて6種類のオブジェクトを仮想空間に準備し、virtual hand による把持実験を行った。実験の結果、6種類のオブジェクトが適切に把持可能であることが示された。2. 手指運動のリハビリテーションを想定し、手指でペンを把持し、放すという運動と、その運動想起時それぞれの脳波を測定し、SVM(support vector machine)を用いた判別器による判別率の検討を行った。実験参加者は健常者1名であった。運動時と運動想起時の視覚的なキューをディスプレイ上に提示するプログラムを作成し、実験では、運動(運動想起)/リラックスの指示を提示して脳波を測定した。実験結果より、運動想起/リラックスの判別が63.3%の精度で行えることが示された。判別器の精度向上については引き続き検討を行っている。3. 逆運動学を用いた7自由度のロボットアーム・シミュレータを作成し、リハビリテーション用仮想空間における食事や水分摂取のための動作検証が行えることを確認した。また同シミュレータにより生成された7自由度のロボットアームの制御パラメータを使用することにより、実機ロボットアームの動作確認が行えるようになった。さらに、シミュレータから実機ロボットの操作が行えることも実験により示された。
3: やや遅れている
健常被験者2名の前腕部より取得した2チャンネルの筋電信号が2種類の判別器のそれぞれにおいて適切に学習できることが確認できた。また仮想空間における virtual hand の操作も可能になった。さらに、ヒト上肢の代替として、逆運動学を用いた7自由度のロボットアームも仮想空間内に構築できた。しかし、コロナ感染症の影響により、患者との面会が大きく制限され、患者による評価実験の実施ができなかった。
今後、手のリハビリテーションを行うための装具を試作し、生体信号を活用したリハビリテーションの検討を進める。また仮想空間内の麻痺上肢を模したロボットアームを併用して、リハビリテーションを効果的に行うための検討も進める。
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