神経筋疾患患者の生活の質の向上を図ることを目的に、本研究では、生体信号を活用してニューロリハビリテーションを行うための上肢運動支援システムの検討を行った。2021年度には、以下に示す研究成果が得られた。 1. 手指運動のリハビリテーションを想定し、「手を閉じて、開く」という運動想起時の脳波を測定し、SVM(support vector machine)判別器による判別率の検討を行った。実験参加者は健常者1名とした。運動想起時の視覚的キューをディスプレイ上に提示するプログラムも作成し、運動想起/リラックスのキューを提示した際の脳波を測定した。実験結果より、運動想起/リラックスが 73.3 %の精度で判別を行えることが示された。 2. 1.のリハビリテーションを効果的に行うために、手指を閉じたり、開いたりすることを補助するための手指装具を製作した。脳波測定用PCと接続して運動想起時の判別器の出力と連動して、手指の開閉の動作確認を行った。実験結果より、同装具が適切に動作することが確認できた。 3. Withコロナ下でのリハビリテーションを実施するため、仮想空間でリハビリテーションを行うシステムの検討を行った。まずAR(augmented reality)上肢を作成し、着座した健常被験者の右上肢と重畳表示させた。1.のシステムにより、同被験者の運動想起時の脳波をSVM判別器で判別し、AR上肢の挙動を確認した。実験結果より、健常被験者の運動想起と連動してAR手指が開閉されることが確かめられた。 4. 3. のリハビリテーション仮想空間にネットワーク経由で複数のユーザが参加可能な機能を作成した。実験結果より、複数のユーザが1リハビリテーション仮想空間に参加できることが示された。これにより、医師やリハビリテーションスタッフ、患者が対面できない状況でもリハビリを実施することが可能になると思われる。
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