研究課題/領域番号 |
19K11351
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
植木 美乃 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40467478)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニューロリハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究では、定常刺激ではなく患者個人での最適歩行リズム(周波数)に合致させたパターン直流刺激(tACS)を脳に与えることで、歩行リズムの脳内ネットワークを人為的に制御し、歩行の脳内表現の空間的パターンを最適化することで歩行障害を正常化することを試みると同時に、介入による脳内ネットワーク変容をrs-fMRIやTMSの非侵襲的脳機能計測法を用いて捉えることを目的とする。歩行リズムを制御することで治療法が限られていたPD関連疾患でみられるすくみ足、加速歩行、小股歩行などの歩行障害を正常化する革新的な歩行リハビリテーション法の開発を目指すものである。 本研究では、PD患者個人での最適歩行リズムを決定する個別化リハビリテーションを行っている。至適周波数は、前評価の際に最良の歩行状態(On状態)における歩行周波数として決定された数値その周波数を歩行リズム直流刺激に用いる。刺激は歩行の立脚期となる際に健側踵初期設置のタイミングで圧センサからのトリガーにより患者個人の一歩行周期に合わせて-1-+1mAの微弱電流がサイン波形一周期で誘導される(closed loop stimulation)。 既にシステム開発は終了し、2019年より特定臨床研究として最適化したclosed loop stimulationを併用した歩行リハビリテーションとシャム刺激を二重盲検で検討している。PD患者は、実刺激もしくは偽刺激を行いながら自然歩行を4分×4セットを行う。歩行リハビリテーションは週2回×5週間、実際の介入を合計10回行っている。 現在までに終了した本刺激12例、偽刺激12例での中間解析では、本刺激群で治療後で有意に歩行スピードや左右差が改善しており効果は中間評価では妥当性を示唆した。MRIでのtACS刺激領域のシュミレーションでは、小脳半球から一部深部脳幹へ刺激が波及していることが明らかとなった。また、実際にPD患者の実刺激により歩行が最適のリズムへ引き込まれるかの検証も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で研究参加した対象者数は制限されたが、MRIでのシュミレーションやtACSにより歩行リズム変化の基礎データの検証を加えることで、新規歩行リハビリテーションの脳内や歩行に与える影響をさらに深く検討することができた。特定臨床研究であるため、中部圏から新たに研究参加される患者もおられた。
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今後の研究の推進方策 |
特定臨床研究としての患者のリクルートをさらに継続していく。 リハビリテーション前後でのrsfMRI撮像が全例で行われていないため、積極的にrsfMRIでの脳内ネットワークの変化に対する撮像と解析も進めていく。 COVIDで海外での学会には参加できないが、中間解析で一定の効果を認めたため、国内研究者との結果に関する討議を行い、海外雑誌への論文化に向けての準備も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19のため海外出張に行けなかった点と、外来での特定臨床研究に参加される被験者数が制限されていたため。
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