研究課題/領域番号 |
19K11354
|
研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
吉野 賢一 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (90201029)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 前頭前野 / 機能的近赤外分光法 / とろみ調整食品 / 摂食嚥下リハビリテーション |
研究実績の概要 |
多くの医療機関や介護施設において,誤嚥予防として食品形態を調整するためにとろみ調整食品(以下,とろみ剤)が使用されている.とろみ剤による食品形態の変化が喉頭侵入や誤嚥,咽頭残留に及ぼす影響についての報告は多いが,脳機能との関連については不明な点が多い.本研究では,とろみがもたらす前頭前野への影響について,非侵襲的な脳機能測定法である機能的近赤外分光法を用いて検討した.被験者は右利き女性42名(平均年齢21.4±0.6歳)であった.被験者に粘性の異なる3種類の緑茶およびジュースを味わう課題を行わせ,OEG-16により課題中の前頭前野の活動を記録した.緑茶およびジュースを味わっているときの前頭前野の活動をBrain Analyzerにて解析した.本研究において被験者の嗜好性の低下が不快情動となり,眼窩前頭皮質(11野)の活動に反映される可能性が示唆された.また,とろみを添加した飲料は前頭極(10野)および11野の活動を変化させることを見出した.脳活動の変化は,飲料に対する嗜好性の変化や味の違い,新奇性などによるものだと考えられた.主に誤嚥予防のために使用されるとろみ剤は,前頭前野,とくに10野および11野の活動の変化を促す目的としても使用できる可能性が示唆された.本研究より,とろみ剤を使用した今後の摂食嚥下リハビリテーションにおける新たな訓練法の開発,認知症の予防などへの臨床応用が期待できると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1)非侵襲的な方法を用いて脳活動を測定し、情動に関わる脳領域の特定およびその役割を明らかにし、2)脳活動により快情動「美味しい」の客観的かつ定量的な評価を試み、3)高次脳機能の回復・向上を目的とした新たな摂食嚥下リハ評価・訓練法を開発することである。1)および2)について結果をだしたが、3)については今後着手する。
|
今後の研究の推進方策 |
脳活動と眼球運動・瞳孔径を専用解析ソフト:Brain Date Analyzer(既存備品)により解析する。さらに脳活動については専用解析ソフト:Brain Viewer(既存備品)で可視化する予定である。これらをSD法の結果とあわせて相関を調べ、快情動「美味しい」に関与する脳領域を特定し、それに関連する脳活動変化を解析したい。
|