研究課題/領域番号 |
19K11354
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
吉野 賢一 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (90201029)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視線計測技術 / 視線滞留時間 / 食嗜好 / 背景色 |
研究実績の概要 |
視覚で得られる情報量は多く、外部から生体にもたらされる全情報量の約8割を占めるとも言われ、様々な選択判断の大きな要因となっている。視線についての先行研究では、選択肢がある中でより好ましいものにより長く視線が注がれるという研究や、視線運動から潜在的興味を推定する研究など、視線計測技術を用いた研究が報告されている。本研究では、料理を見た時の「食べたいと思う」「食べたいと思わない」という食嗜好に影響を与える1つの要素として、料理の背景色に注目し、背景色の違いにより被験者の嗜好が変化するのかどうかについて視線計測技術を用いて検討した。あらかじめ嗜好調査として、様々な料理と背景色の組み合わせの画像を見てもらい、質問に答えてもらった。次に、嗜好調査で得られた情報の中から、「食べたいと思う」料理に「食べたいと思わない」と感じた背景色を合わせた画像と、「食べたいと思わない」料理に「食べたいと思う」と感じた背景色を合わせた画像を被験者に示し、どちらの料理を食べたいと思うか答えてもらった。その結果、前者を選んだ被験者は、全19名のうちわずか7名で、残りの12名は後者を選んだ。すなわち、背景色が食嗜好に大きく影響を与えることが示された。また、嗜好調査中に画像中の各料理を見ていた時間の合計を100%として、「食べたいと思う」料理に注がれる視線滞留時間の割合を算出した。その結果、「食べたいと思う」料理を見る時間が「食べたいと思わない」料理を見る時間に比べ、長くなる傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、fNIRSを用いた実験により、「美味しい」という快情動に前頭前野の脳領域が関与している可能性を報告した。今年度は、初めて用いる視線計測技術の確認と習得を目的とした実験を試みた。「美味しそう」「食べたい」といった食嗜好と視線滞留時間との関係を調べた結果、「食べたいと思う」対象物に対して、それ以外の「食べたいと思わない」対象物よりも、視線滞留時間が長い傾向が認められたことから、選択肢がある中でより好ましいものにより長く視線が注がれるという先行研究の結果を支持する結果が得られた。今後の実験において、意義のある結果がえられたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでそれぞれ単独で用いてきたfNIRSと視線計測技術とを併用し、「美味しい」快情動を示す時の脳活動領域および眼球運動との関連について明らかにしていく予定である。そうすることで、「美味しい」快情動時の脳・眼球運動の変化を客観的かつ定量的に測定でき、新たな摂食嚥下リハビリテーション評価・手法へとつなげる基盤となることが期待できる。
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