研究課題/領域番号 |
19K11362
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
落石 知世 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30356729)
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研究分担者 |
清末 和之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (50356903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβタンパク質 / オリゴマー / トランスジェニックマウス / 習慣的運動 / GFP / シナプス / 行動解析 |
研究実績の概要 |
ヒトは加齢とともに記憶力や学習効率が低下するが、運動によって高齢者の認知機能が改善されることはよく知られている。アルツバイマー病(AD)患者でもこれは例外ではないことから、薬によるAD治療法が未だに確立しない中、習慣的な運動は新たな治療的介入の一環として注目を集めている。ADにおいてシナプス機能の低下はアミロイドβタンパク質(Aβ)のオリゴマーによって引き起こされることが示唆されている。 本研究ではAβにGFPを融合することによりAβオリゴマーのみを形成する、Aβ-GFP融合タンパク質を用いて、生きた神経細胞内でAβ動態を可視化できる新規ADモデルマウス(Aβ-GFPマウス)を使用した。このモデルマウスは、老人斑の形成・神経原繊維変化・脳萎縮は起こらないが、老化とともにタウのリン酸化が亢進し、海馬の長期増強(LTP)が抑制され、スパインの数が減少し、生後2か月齢で既に記憶障害を呈することから、AD発症初期にAβオリゴマーに起因して起こる様々な神経活動の変化を捉えることが可能である。そこで細胞内Aβオリゴマーが引き起こす認知機能障害が習慣的な運動によってどのように変化するのか、その変化を引き起こす生体内の因子を解析し、作用機構を解明する。今年度は、回転かごによる自発的な運動負荷がAβ-GFPマウスの認知機能障害を改善することから、Aβオリゴマーと相互作用するタンパク質をより直接的に解析するため、 GFPを利用して免疫沈降を行い、Aβ-GFP融合タンパク質と相互作用する可能性のあるタンパク質を質量分析法にて網羅的に解析した。またこれまで得られているDNAアレイによる結果と照らし合わせ、習慣的運動で変化する分子群を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られていたDNAアレイの結果から、Aβ-GFPマウスにおいて、回転かごによる運動群は非運動群と比較して、ドーパミン受容体の遺伝子の発現が増加していることが明らかとなっていた。今年度得られた質量分析の結果、Aβ-GFPマウスの海馬において、Aβオリゴマーはドーパミン受容体の転写調節因子と相互作用する可能性が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
Aβオリゴマーによって、ドーパミン受容体タンパク質の発現が低下し、運動によってそれが野生型と同等まで回復するのかをタンパク質レベルで証明する。また、Aβ-GFPマウスにおいてドーパミン受容体の活性化がシナプスの長期増強などの可塑的変化を起こすことができるかを電気生理学的に検証する。さらに、Aβオリゴマーとドーパミン受容体の転写調節因子との相互作用についてより詳細に解析し、アルツハイマー病におけるドーパミン受容体の発現と運動負荷による変化の過程を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物の飼育費として考えていた経費について、産業技術総合研究所の運営費交付金で全額を賄うことができたためその分の余剰が生じた。そのため次年度の実験動物維持費、外注分析費、論文の投稿および掲載費として使用する。
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