研究課題/領域番号 |
19K11367
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
横田 茂文 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (50294369)
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研究分担者 |
武田 湖太郎 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (50618733)
濱 徳行 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (60422010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 孤束核 / 結合腕傍核 / 視床下部脳弓周囲領域 / 延髄腹外側部 / CGRP / 睡眠時無呼吸症 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、前年度に引き続き睡眠時無呼吸の結果生じる血中の酸素分圧低下情報を覚醒中枢である視床下部脳弓周囲領域あるいは前脳基底部や、呼吸中枢である延髄腹外側部へ伝達する神経路について形態学的に解析した。逆行性標識物質コレラトキシンbサブユニット(CTb)を延髄腹外側部あるいは結合腕傍核に注入し、間欠低酸素刺激をマウスに与えると、多くの孤束核に存在するCTb標識ニューロンが活性化マーカーであるFosタンパクを発現することを確認した。前年度の実験結果と合わせると、頚動脈小体で感受され、孤束核に入力した低酸素情報は、直接あるいは結合腕傍核を介して延髄腹外側部の呼吸中枢へ送られることにより呼吸促進が引き起こされることが示唆された。 次に低酸素による覚醒機構について、結合腕傍核と前脳基底部の接続をCre-loxPシステムを用いた選択的神経路標識法により解析した。その結果、多くの結合腕傍核のグルタミン酸作動性ニューロン(VGLUT2)の投射線維終末が前脳基底部に存在するコリンアセチルトランスフェラーゼ陽性ニューロンと近接することを確認した。この結果は、結合腕傍核が視床下部脳弓周囲領域とともに前脳基底部へ低酸素情報を送ることにより覚醒を引き起こしていることを示唆している。 さらに、血中二酸化炭素レベルの上昇による呼吸喚起と覚醒を解析するため、Phox2B-Creマウスを用い、中枢性化学受容細胞の投射を解析した。その結果、Phox2B発現細胞は投射線維を結合腕傍核や視床下部脳弓周囲領域へ送ることが確認された。結合腕傍核では脳弓周囲領域へ投射するニューロンとその分布が一致し、脳弓周囲領域ではオレキシンニューロンの分布と一致することを認めた。これらにより、中枢性化学受容細胞は直接および結合腕傍核を介して視床下部オレキシンニューロンへ情報を送り、覚醒を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
逆行性標識法と間欠低酸素刺激を利用した機能的神経路標識法を用いて神経路の同定を行っている。しかし、手動でガス濃度を変化させる間欠低酸素刺激を行っていたため、前倒し請求によりコンピュータで制御できる3種ガス混合装置を購入した。納品が年度末になったため、令和3年度に購入機器を用いて間欠低酸素暴露をする実験を行い、例数を増やす予定である。また、新しいロットのチャネルロドプシンを導入するアデノ随伴ウイルスの感染効率(発現効率)が非常に悪く、新しく作成を依頼したため、本年度は十分な実験を行うことができなかった。令和3年度はPhox2B-Creマウスを用いた実験を行う予定にしている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、引き続き血中二酸化炭素レベルの上昇による呼吸喚起および睡眠からの覚醒のメカニズムを解析するために、Phox2B-Creマウスを用いた選択的神経路標識法を用いた呼吸中枢あるいは覚醒中枢へ至る神経路の同定を行う。また、それらの神経路が高二酸化炭素暴露によって活性化することを、逆行性標識法とFosタンパク発現を利用して解析する。さらに新しいロットのアデノ随伴ウイルスを用いてチャネルロドプシンを導入し、結合腕傍核に投射する孤束核のグルタミン酸作動性ニューロンおよび後台形体核のPhox2Bニューロンの線維終末を光刺激することにより、呼吸変化および睡眠からの覚醒を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ感染拡大のため学会がオンライン開催となり、旅費を使わなかった。
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