研究課題/領域番号 |
19K11368
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
小川 豊太 (濱口豊太) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80296186)
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研究分担者 |
田山 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (10468324)
西郷 達雄 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (50622255)
鈴木 誠 東京家政大学, 健康科学部, 教授 (80554302)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過敏性腸症候群 / ストレス / 脳波 |
研究実績の概要 |
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は国際診断基準であるROME Ⅳ1)に記された,腹痛,便通異常,心理的不安を呈する消化器機能異常によると想定される疾患群である.IBS有症状者は常時, 消化管からの知覚信号に注意を向けて腹痛を増悪させていると考えられる(Saigo T. 2015). 脳は特定の機能を果たしていないときに特徴的な神経機能結合 (Default Mode Network: DMN) を形成する(Killingsworth MA, 2010). IBSには脳領域間の機能結合の異常が指摘されている (Kilpatrick, 2015). IBSを健常群から弁別する分類子 (classifier) は脳機能画像研究により作成されており, 70%の精度で脳の構造画像からIBSかどうかを判別できるようになった (Labus JS. 2015). しかし, 脳波解析のDMNからIBSの腹痛を弁別できる分類子は未だ明らかにされていない. 本研究は (1) IBS有症状者の内臓知覚の認識過程の特徴を電気生理学的に検証し, (2) IBS症状を軽減させるDecNef開発を行った. IBS症状の有無がROME Ⅳ基準に基づいて判断されたIBS有症状者(IBS群)11人,無症状者(Non-IBS群)11人の脳波データを得て脳波解析を行った.各群のGSRSの中央値は,IBS群40点,Non-IBS群34点であり,Tielemansの分類によれば,本研究のIBS群の症状は軽症,Non-IBS群はほとんど症状なしであった.得られた脳波からα波,β波のパワースペクトラムを算出し,機械学習させて作成したclassifierの識別能力を評価した結果,IBS有症状正診率91.2%,無症状正診率89.8%,感度90.3%,特異度90.7%であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は被験者を実験室に招いて脳波測定することに制限があり,予定していた30名のうち,22名までの実験に留まった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年3月までに,成人女性を対象として,エジンバラ利き手テスト(EHI)を実施し,調査対象84人に対し有効回答数83を得た.EHIで70%以上の者を右利きとして,IBS症状の有無がROME Ⅳ基準に基づいて判断され,IBS有症状者(IBS群)16人,無症状者(Non-IBS群)67人に分けられた被験者リストを作成した.2021年度は,脳波測定数は各群20人に到達するまで測定を行う.脳波測定が終了したら,脳波解析を行い,IBS有症状者と無症状者のα波とβ波のパワースペクトラムによる機械学習を行い,症状の有無を判定する識別子を作成する.作成した識別子を搭載した判定基準によって,別の被験者のIBS有無を判定させ,正診率90%以上を目指す.また,脳波の生波形を連続的に解析してIBS症状の有無を判定する折りたたみニューラルネット(CNN)による解析も進める.IBS症状を弁別する識別子を実装させた脳情報復号器を作成し,関連する脳部位の活動を自分自身の力で調整できるようにトレーニングする方法Decoded Neural Feedback: DecNef (Shibata K. 2011)の開発を進め,2022年度より開始予定である,IBS有症状者を対象として脳波DecNefによる腹痛軽減効果を検証する準備を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は予定した感染症対策の影響により,被験者の実験が完了せず脳波解析が未完了となったため,脳情報複合機(DecNef)に実装するIBS症状識別子とともにアプリケーション開発費用を使用できなかった.この間,機械学習用のPCを購入した.今年度の前半で当初予定した被験者の測定を終了させ,想定より遅れているがDecNef装置の開発を進める予定である.
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