研究課題/領域番号 |
19K11369
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
岸田 綱郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00370205)
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研究分担者 |
新井 祐志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50347449)
清水 一憲 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (70402500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生医療 / ダイレクト・コンヴァージョン / バイオマイクロシステム |
研究実績の概要 |
サルコペニアの原因には、骨格筋タンパクの合成と分解のバランスの異常、筋組織の修復能の低下などがあると考えられているが、それらの分子メカニズムの多くは未解明である。サルコペニアの病態を分子レベルで解析するためのツールとして、生理的な老化を反映する培養3Dヒト筋組織の開発が必要であるが、これには3つの要素技術が必要である。すなわち、①老化筋芽細胞、②3Dスキャフォールド、③機能評価系。最近我々は、ヒト筋芽細胞を線維芽細胞から誘導する独創的な技術を開発した。高齢者から得た線維芽細胞から誘導した筋芽細胞は老化しており、上記の①に有用な理想的な細胞である。さらに我々は、②に適したスキャフォールドも開発済みであり、③も研究分担者が独自技術を開発している。そこで本研究では、①~③を有機的に結び付け、スキャフォールドの修飾や筋芽細胞の配向性を調整することで、老化筋組織の解析に最適な培養3Dヒト筋組織を開発し、サルコペニアの分子メカニズムの解明に応用する基盤を確立する。 本年度は、フィブリンを主成分とするゲルに作成した筋芽細胞を包埋し、三次元筋組織を構築した。数日間分化誘導培地で分化培養を行い、外部から電気刺激を加えたところ、構築した三次元筋組織は電気刺激に応答して収縮して張力を発生した。免疫染色を行ったところ、筋組織内に多数のサルコメア構造を保持する筋管細胞が存在することがわかった。収縮力測定マイクロデバイスを用いて筋組織の発生張力の定量を行ったところ、経時的に収縮力が増加する傾向が観察された。また、構築した筋組織における筋分化マーカー発現量変化や筋収縮特性などの評価も行い、非常に有益な情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の中核である、3Dヒト筋組織の収縮力の評価については、名古屋大学の清水らとの共同研究によりすでに完成している。発生力評価マイクロデバイスのピットの部分にフィブリンゲルとマトリゲルを充填したのち、ダイレクト細胞を播種。電気刺激し収縮応答性を検討した。その結果、分化誘導が進行するに従って、収縮力が優位に上昇していくことを見出した。また、3D培養では2D培養に比較して、筋芽細胞の分化マーカーが優位に亢進していた。(J Biosci Bioeng. 2019 Dec 16. pii: S1389-1723(19)30922-3. doi: 10.1016/j.jbiosc.)
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今後の研究の推進方策 |
3Dヒト筋組織のin vivo移植と生体内機能解析を行う予定である。免疫不全マウス(SCID/NOD)の前頚骨筋の一部を切除したのち、作成した培養3Dヒト筋組織を移植する。移植後に組織を回収して形態学解析、遺伝子発現を検討する。またin vivoでの筋収縮力を測定するため、マウスの後肢をパルスジェネレーターで電気刺激を加えて、収縮力をデジタルフォースゲージで測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学における、コロナ感染の被害拡大防止のために、実験研究の時間を大きく減らさざるえなかった為。R1年度の残額は、R2年度の予算と合わせて、本来ならば実験がスタートする予定であった、3Dヒト筋組織のin vivo移植と生体内機能解析を行うための予算として使用します。またin vivo 移植したマウスの筋力測定、速筋と遅筋の分化誘導のコントロールなでの研究にも使用する予定です。
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