研究課題
サルコペニアの病態を分子レベルで解析するためのツールとして、生理的な老化を反映する培養3Dヒト筋組織の開発が必要であるが、これには3つの要素技術が必要である。すなわち、①老化筋芽細胞、②3Dスキャフォールド、③機能評価系。最近我々は、ヒト筋芽細胞を線維芽細胞から誘導する独創的な技術を開発した。高齢者から得た線維芽細胞から誘導した筋芽細胞は老化しており、上記の①に有用な理想的な細胞である。さらに我々は、②に適したスキャフォールドも開発済みであり、③も研究分担者が独自技術を開発している。そこで本研究では、①~③を有機的に結び付け、スキャフォールドの修飾や筋芽細胞の配向性を調整することで、老化筋組織の解析に最適な培養3Dヒト筋組織を開発し、サルコペニアの分子メカニズムの解明に応用する基盤を確立する。そこで、フィブリンを主成分とするゲルに作成した筋芽細胞を包埋し、三次元筋組織を構築した。数日間分化誘導培地で分化培養を行い、外部から電気刺激を加えたところ、構築した三次元筋組織は電気刺激に応答して収縮して張力を発生した。免疫染色を行ったところ、筋組織内に多数のサルコメア構造を保持する筋管細胞が存在することがわかった。収縮力測定マイクロデバイスを用いて筋組織の発生張力の定量を行ったところ、経時的に収縮力が増加する傾向が観察された。また、構築した筋組織における筋分化マーカー発現量変化や筋収縮特性などの評価も行い、非常に有益な情報を得た。また、作成した骨格筋細胞を移植するためのスキャフォールドとして、コラーゲンゲルシートおよびPolysaccharide Nanogel を用いてin vitroおよびin vivoで実験を行った。これらの結果、サルコペニアの病態を分子レベルで解析するための重要かつユニークなツールの開発につながる成果が得られたと考えられる。
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