線維筋痛症モデル動物に対して浅い温水での運動療法の有用性を検討する目的で、予備実験として野生型マウスに対して3種類の歩行、(1)5分間の通常自由歩行、(2)浅い温水を入れた条件での1分間歩行、(3)浅い温水を入れた条件での5分間歩行を別々の日に行った。その結果、5分間の通常自由歩行に比し、浅い温水を入れた条件下での歩行において、有意な歩行距離並びに最大歩行速度の増加が見られた。このことから、浅い温水内での歩行が運動療法として利用できる可能性が考えられた。次に、これら3つの歩行運動を線維筋痛症モデル動物に対して応用した。その結果、線維筋痛症モデル動物においても浅い温水内での歩行は有意に距離と速度を伸ばした。しなしながら、モデル動物への5分間の浅い温水内歩行は、心電図上で不整脈を生じた。従って、線維筋痛症モデル動物に温水内歩行を行う場合な、作製後の経過に合わせて、徐々に歩行時間を増加していく必要性が考えられた。次に若い線維筋痛症モデル動物を用いて、段階的に浅い温水内で歩行運動を行わせることで、痛み閾値、行動、及び心血管系にどのような影響が起こるのか検討した。その結果、浅い温水内での歩行は、線維筋痛症モデル動物の感覚閾値や通常の行動に影響しなかったが、運動負荷した際の疲労からの回復や運動療法前後に計測した心電図より心肺機能に良い影響があった。 現在、線維筋痛症モデル動物に対して上記の温水内運動療法と併用した振動刺激や各種薬剤の影響、新たに開発した中枢神経の運動神経評価方法、脳波計測や電気生理学的手法を用いて疼痛緩和作用を実験中である。
|