研究課題/領域番号 |
19K11388
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
八幡 徹太郎 金沢大学, 附属病院, 講師 (10334781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 痙縮 / 尖足 / 内反足 / 評価 / 片麻痺 / 対麻痺 |
研究実績の概要 |
中枢性麻痺(脳卒中後の片麻痺や脊髄損傷後の対麻痺など)を患うと、その麻痺肢には「痙縮」と呼ばれる筋緊張亢進状態が生じることが多い。そして痙縮は、日常動作時に増強する特徴がある。それは、床や椅子から起き上がる時、歩いている時、着座時や床に横になる時など、日常的に行なわれる動作の時である。その程度が過剰となれば、各種日常動作時に手足が自分の意図せぬ恰好となることで円滑な振る舞いを阻害したり、極端な場合はその動作を完全に不可能にしたりする。日常生活でそのような事態が日常的に繰り返されると、日々の生活自体がその人にとってストレスのボディーブローの如くである。ひいてはその人の生活活力や自立度を下げる原因となる。 足部については、痙縮の程度がひどいと、歩行時に足が爪立ちや内がえしのような恰好になってしまい、つまり足の裏全体をまともに地面に接地できなくなる。その局部の問題だけで歩くことをあきらめる人もいる。 このような痙縮の弊害を取り除く、あるいは和らげるために、近年、外来で行える筋内注射療法(ボツリヌス治療)など、比較的簡便で効果的な治療法も広がってきており、当該患者さんにとっては福音となっている。 一方、治療を提供する立場からは、一般に何事においても治療を行う場合はその前後の客観的判定手段が重要なのだが、痙縮に関しては、痙縮治療の前後での効果判定法として十分満足できるものがあるとは言い難い。その着目点は、当該患者に弊害をもたらす痙縮がその人の動作時に増強するものであるのに、現存する臨床評価は当該患者が安静にしている状態で判定するものだという、ミスマッチである。 痙縮治療前後で使用する臨床効果判定を質的に向上させたいとの考えから、当該患者の動作時に増強する痙縮を定量的にとらえられるような計測装置につき、足部痙縮を対象に、独自のアイデアで開発しようとするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度にあたる2019年度は、動作中の痙縮増強に伴って発生する足部の変形力を捉える装置の具現化を目指す計画(健常人を対象に試作装置の開発)で着手し、健常な研究協力者2人について、プラスチック短下肢装具をベースとした外骨格の内側に小型圧力センサーを数か所設置した計測試作装置(第一世代)を製作し、検証作業を行った。 圧センサーについて、当初使用予定していたロードセルが、装置試作設計時点で不適切(装置に組み込みにくい)と判断。そのため、他に適用できるセンサーの探索と検討、およびその作動性の確認を要した。株式会社共和電業が提供する製品(小型圧センサー)を使用する方針で解決した。 健常協力者1人目について検証完了し、装置の具現化のイメージはついたが、健常協力者2人目での検証が終わっていない。(新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を優先し、同検証作業を止めているため) 概して、予定の7割程度の進捗状況と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、試作装置(第一世代)による測定トライアルの実施を、実際の有症状者(研究参加同意者)を対象に開始し、当初計画として、年度内に5人以上の計測を目標としている。一方、COVID-19対応のため、患者群からのボランティアを募って行う同計画は、春期間におけるスタートは難しいと判断している。 そこで、2019年度で完遂できなかった健常ボランティアでの検証については、医療関係者(理学療法士等)を対象としていることから、適切なCOVID-19対応を整えたうえで健常協力者2人目の検証作業を行い、また、実際の有症状者を対象とした予定の計画が開始できない状況であれば、健常協力者での検証人数を増やし(全体で5人以上を想定)、当初予定していなかった健常協力者のデータを一つの成果としてまとめるという新たな方針も念頭に置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
①購入する圧センサーの見直しを要したが、最終的に購入した小型圧センサーは当初予定していた物品より高額であった。そのため、当初予定していた専用PCの購入を取りやめた。②装置製作代(プラスチック製の下肢装具タイプ、義肢装具製作所に製作依頼したもの)の請求額が、事前に提示されていた額面より安く済んだ。③2019年度の健常研究協力者への謝礼支払いを2020年度に繰り越した(同者への協力継続を2020年度も続けてもらうことで合意得たため)。以上の調整等が重なった結果と考える。 同使用額については、健常研究協力者への謝礼金相当であり、それに充てることができる。
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