研究課題
リハビリテーションにおける障害者の機能および能力害の回復には運動学習が重要であり、段階付けられた行動の学習には柔軟な適応行動が必要である。実験動物を用いた研究では、学習行動のステップアップにより、より複雑な行動の獲得における神経基盤については不明な点が多い。本研究では学習に重要な大脳基底核系における内因性カンナビノイド、ドーパミン、小脳系におけるセレベリン、そして環境の学習への影響をマウスの3レバー・オペラント課題を用いて検討した。その結果、(1)2-AG/CB1受容体シグナルは、行動の柔軟性に関与しており、レバー押しの行動選択に影響を与えており、2AG-KOマウス、CB1-KOマウスでは学習障害を認めた、(2)ドーパミンD2-KOマウスでは、単純な1レバー課題の学習は可能であるが、3レバー課題の学習が困難であった、(3)セレベリンcbln1-Koマウスでは学習そのものの障害は確認されなかったが、レバー押しの行動選択に違いがあった、(4)飼育ケージに遊具などを配置したエンリッチメントの環境下で飼育されたマウスでは、学習過程におけるレバー押しの行動選択の特徴に違いがあることが示唆された。さらに、D2-KOマウスに対する別の学習スケジュールを検討した。その結果、一部のD2-KOマウスにおいて、学習効率の低下を認めるものの、3レバー課題の学習が改善し、非薬物療法によるリハビリテーションの可能性が示唆された。今後、障害のある動物に対する最適な学習方法を検討するため、機械学習によるレバー押しデータの分析方法を検討した。ドーパミンとセレベリンのノックアウトマウスで3レバー課題の学習が障害されたことから、3レバー課題の学習に大脳基底核系と小脳系が相互に関連している可能性が示唆される。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Behavioural Brain Research
巻: 429 ページ: 113904~113904
10.1016/j.bbr.2022.113904