これまで、ロボットスーツHALを用いた上肢運動の実施とその評価、複合現実(MR)による上肢運動支援・評価アプリケーションの開発を、段階的に進めてきた。今年度は主にアプリケーションの動作の解析と、その結果に基づく改善を実施した。新しく入手可能となった複合現実デバイスを利用することで、視野とともに上肢運動の計測可能範囲が拡大し、より安定したデータの取得が可能となった。そのため、デパイス変更に伴う計測と調整を行なった。 上肢運動支援・評価アプリケーションの開発は、これまでの予備的試験の結果を元にテストバージョンの修正を繰り返してきた。しかしながら、動作速度と、時間的空間的精度には限界が認められた。また使用機器の制限から、視野と上肢運動の計測範囲を逸脱する例もみられていた。これらに対しては、アプリケーション上の表示の工夫(上肢を移動させる範囲の制限や、指示の方向、タイミングの調整)を行ない対応してきたが、計測逸脱例が一定数存在した。 一方、新しく入手可能になったデパイスは、視野と上肢のスキャン可能範囲の拡大(特に体に近い位置が拡大した)があり、比較的大きな動きの計測が可能となった。計測タイミングが安定しない点には個別に対応が必要であるが、計測逸脱例の減少により、より実用性が増し、臨床試験にも耐えられると考えられるタスクの開発にも目処がたった。空間的な精度に関しては、これまでのデパイスと同程度で可能と考えられたが、上記のデバイス独特の計測タイミングの調整が難航し、調整のための予備試験のみの実施となった。
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