研究課題/領域番号 |
19K11394
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
上出 直人 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20424096)
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研究分担者 |
柴 喜崇 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40306642)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 転倒 / 自己効力感 / 運動機能 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,高齢者の転倒リスクに関して,身体的なリスク要因と心理的なリスク要因に着目し,両者の相互作用に基づく新たな転倒予測手法を確立することを目的としている.研究課題の初年度である2019年度に関しては,転倒リスクの心理的要因として,転倒関連自己効力感の日本人高齢者における転倒予測因子としての妥当性について検証を行った. 対象は,65歳以上で,地域で自立した生活を送っている高齢者237名とし,1年間の縦断的観察研究を行った.転倒関連自己効力感の評価には,自記式の評価尺度で日本語版についても報告されているFalls Efficacy Scale-International(FES-I)の短縮版(Short FES-I)を使用して評価した.その他,歩行速度や筋力などの運動機能,抑うつなどの精神機能,健康状態などの評価も行った.対象者における1年間の転倒発生について前向きに調査し,1年間の転倒発生状況とShort FES-I,運動機能,健康状態との関連性を統計学的に検証した. 結果,Short FES-Iは,運動機能および健康状態とは独立して,転倒発生と統計学的に有意な関連性を示した.海外の研究では,転倒関連自己効力感は転倒発生を予測しうる心理的要因として妥当性が認められている.一方で,転倒関連自己効力感には,文化や人種の影響があり,日本人高齢者における転倒関連自己効力感の妥当性は十分に解明されていなかった.2019年度の研究成果により,日本人高齢者の転倒リスクにおける心理的要因として,転倒関連自己効力感が有用であることを実証することができた.特に,本研究で用いたShort FES-Iにより日本人の高齢者の転倒発生を予測しうると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては,転倒を予測しうる適切な身体的因子と心理的因子を同定することが第一に必要とされる.2019年度に実施した研究において,心理的因子として転倒関連自己効力感が妥当であることを確認することができた.転倒予測に関する適切な心理的因子については,日本人高齢者に関する先行研究が少ないため,2019年度の研究成果は,全体の研究遂行においても大きな進捗であると考えている. 一方で,身体的因子については,これまでに多くの研究報告があるため,新たに調査を行い,数ある身体的因子のなかから適切な因子の同定を行っていく必要性は低いと考えられる.ただし,最も転倒予測感度の高い身体的因子を確定していく作業は必要であるが,そのために必要なデータについてはある程度蓄積できている. 以上のことから,現在までに転倒を予測しうる身体的因子と心理的因子については,同定が完了したか,ほぼ同定するための目処が立っている. したがって,本研究課題については,全体的には順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
転倒予測に有用な身体的因子を同定する作業について,現在までに得られているデータの分析を行って実施していく予定である.さらに,今後同定する身体的因子に,2019年度の研究実績で得られた心理的因子であるShort FES-Iを加えて,両者の因子を用いて最適な転倒予測が可能なアルゴリズムを分析していく予定である.一方で,分析を進めていくなかで,統計学的な検出力不足が生じる可能性もある.その場合には,データを追加して対応することを考えている.なお,追加のデータ収集については,すでに実施を計画しているが,新型コロナウィルスによる問題で,計画しているデータ収集が現在の計画通りには進められない可能性もある.その際には,研究計画自体を後ろ倒しにしながら対応していきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については,当初の予算計画から,研究計画の進捗に合わせて柔軟に予算のやり繰りをした結果として生じた差額であり,金額としてはわずかである.したがって,基本的には計画的に予算執行が実施できているものと考えている.次年度についても,計画的に予算を執行していきたいと考えている.
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