研究課題/領域番号 |
19K11396
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研究機関 | 東京通信大学 |
研究代表者 |
高木 美也子 東京通信大学, 人間福祉学部, 教授 (00149337)
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研究分担者 |
鈴木 範子 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 専任講師 (10619381)
前野 譲二 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (30298210)
坂本 美枝 東京通信大学, 人間福祉学部, 准教授 (60454196)
加藤 泰久 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 教授 (60814960)
長沼 将一 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 助教 (70534890)
松浦 真理子 東京通信大学, 人間福祉学部, 助教 (80469436)
土屋 陽介 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 専任講師 (90447037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者とロボットのコミュニケーション効果の測定 / 対話アプリの改良 / ロボットに対する高齢者の受容性調査 / ケアマネジャー支援アプリの開発 |
研究実績の概要 |
高齢者とのコミュニケーションにおける介護職員のスキルを知る為に、高齢者施設の施設長にインタビューを実施した。この施設は今後の事を考え、積極的に対話ロボットを導入していたが、高齢者とロボットのみの会話は、高齢者の聞き取り能力やロボット側の音声認識精度の問題で、成立しにくいことが判明した。またロボットに対する介護職員の受容性は、介護職員がロボット操作に手こずると敬遠しがちとなり、今後、介護職員へのIT・PC教育が、ロボット導入推進の課題の一つになる。 高齢者へのロボットとのコミュニケーション効果を推定するため、高齢者の脳血流量を携帯型脳活動計測装置 HOT-2000で測定した。この計測装置は左右2chで、ヘモグロビンの変化の値を左右夫々のセンサーからの情報として100msecの間隔で取り出すことができる。ヘモグロビン濃度の変化の左右の比をとったLIR(Laterality Index at rest)という指標から、LIRが+時は右脳の活動が優位で不安心理が強く、-時は左脳が優位となり不安が軽減されることが示される。被験者の高齢者は、対話ロボット、研究者との3者の会話中、中高時代に卓球ですばらしい成績を修めたことを意欲的に話していた時、リラックス状態だったことが判明した。 また当初、介護施設で介護職員が入所者の業務報告書を作成する作業を軽減化するアプリ開発を目指していたが、外国人介護補助者がいる場合や音声入力をプライバシーの観点から好まないなど、介護施設によって要求が様々で統一した基準でアプリ開発を行うことが困難な事が判明した。そこで要介護者の自宅を訪問し、心身の状態を確認して報告書を作成するケアマネジャー支援の音声入力アプリ開発に切り替えた。現在、スマートフォンで使用できるモックアップは作成済みであり、2020年度では実際にケアマネジャーに使用してもらい、今後の開発に進めてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者に対するロボットのコミュニケーション効果については、高齢者、対話ロボット、研究者による三者による会話を行い、観察した。ロボットとの対話については、音声認識精度やクラウドを介したタイムラグの問題を回避するため、Wizard of Oz法を用いた。これはオペレータが高齢者の会話を聞きながら、随時、発話内容を考え、人手でロボットに指示し合成音声で発話させ、高齢者の反応を確認する方法である。この方法で、対話ロボットは会話に参加でき、高齢者の反応を観察できた。会話は天気など一般的なものから被験者の私生活に及ぶものまで行ったが、被験者の若い頃の運動における自慢話の時は、脳血流量による脳活動計測で、副交感神経が優位になりストレスが軽減された状態であったことが推定された。 ロボットに対する高齢者の受容性調査において、ヒト型会話ロボット(Sota: VISTONE)、イヌ型非言語ロボット(aibo: Sony)のどちらが高齢者に受け入れられ易いかの比較実験を実施した。これは高齢者の性格によってどちらを好むかが分かれたが、男性高齢者は会話ロボットを好む傾向が見られた。またイヌ型非言語ロボットは、ロボットでも動物としてのイヌという認識が強く、被験者達は、ヒト型会話ロボットに対してよりも要求度が低かった。 ケアマネジャーは、要介護者が心身の状況に応じて、介護サービスが受けられるようにケアプランを作成する。その後、ケアマネジャーが要介護者の自宅を訪問し、心身の状態を確認して報告書を作成し、サービス事業施設、家族などとの連絡調整を行う。今回の支援計画では、ケアマネジャーがスマホアプリにログインし、要介護者の心身の状態で気付いた点等を音声入力したデータを音声認識させ、これがテキストデータとして入力時刻と共に保存される。このスマホアプリを使用することにより、報告書作成における大幅な時間削減が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
介護施設での研究結果から、自動応答システムを使っての、対話ロボットと高齢者の自然な会話はほぼ不可能であった。そのため高齢者とロボットとのコミュニケーションを観察する実験では、対話ロボットは発話内容を研究者がテキストで入力し音声合成のみを利用する実験方法を採用し、別の研究者も会話に参加して雑談を行い、高齢者の状態を観察した。この方式で、対話ロボットは高齢者の話に相槌を打って、会話を円滑にする役割だったが、高齢者は三者の会話を楽しんでいた。2019年度はあくまでもパイロットスタディだったので、今後、より多くの高齢者に参加してもらい,データを取集していく。また聞き取り調査から、高齢になるとカラオケに行くのは気後れがするが、歌いたいという気持ちは大いにあり、対話ロボットと一緒に歌いたいという希望があった。それ故、一つの研究として、高齢者が昔の歌謡曲や童謡等を、対話ロボットと一緒に歌うという、共同作業タイプのコミュニケーションを実施してもらい、高齢者のストレス度や脳状態の調査を考えている。非言語ロボットaiboは、長期療養中の小児に対し、癒し効果が報告されており、実際、何人かの高齢者はaiboを非常に気に入っていた。これは何に起因するのか、経験、性格、あるいは認知力他なのか探ってゆきたい。 ケアマネジャーの業務の殆どは外出先において行うものなので、スマートフォンの音声入力でケアプラン作成や支援経過を入力すれば、PCにも連動し、介護事務所に戻る必要はない。よって報告書作成時間は大幅に減少する。2020年度では開発したアプリを実際にケアマネジャーに使用してもらい、今後の開発につなげてゆく。 COVD-19の影響で、2020年3月からは高齢者施設への出入りが厳しく制限されている。よって計画している高齢者施設における実験は実施できない可能性があり、その場合、研究方法変更も今後の課題の一つになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、介護施設で介護職員が入所者の業務報告書作成する作業を軽減化するアプリ開発を目指していたが、介護施設による要求が様々であり統一基準でのアプリ開発が難しかった為、ケアマネジャー支援の音声入力アプリ開発に切り替えた。この計画変更において、我々は開発エンジニアと最小限のアプリ開発変更で済むように議論を重ねていた為、2019年にエンジニアに支払う予定の金額(30万円)を2020年度に繰り越した。 ケアマネジャー支援の音声入力アプリのモックアップは作成済みなので、2020年度では現場で実際に使用してもらい、改良を加えてゆく(エンジニアへのアプリ開発&改良費用)。ケアマネジャー支援に関する先行アプリは少ないので、特許事務所によって先行技術調査を実施してもらい、特許出願に漕ぎ着けたい(先行技術調査費用、特許出願費用)。高齢者のロボットに対する受容性の研究では、2019年度のパイロットスタディ結果を基に、より多くの高齢者を対象に研究を進め、地域差も調査しようと考えている。徳洲会から野崎苑(大阪)、徳洲苑しろいし(札幌)、徳洲苑かふう( 沖縄)の紹介を受けており、技術担当者、高齢者への対応担当者等、少なくとも3名の研究者が、これら介護施設での調査研究に必要となる(各地への3名分の旅費)。COVD-19予防として高齢者施設への出入り禁止がこの先も継続された場合、本研究は2021年度に先送りする。
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