研究課題/領域番号 |
19K11396
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研究機関 | 東京通信大学 |
研究代表者 |
高木 美也子 東京通信大学, 人間福祉学部, 教授 (00149337)
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研究分担者 |
鈴木 範子 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 専任講師 (10619381)
前野 譲二 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (30298210)
坂本 美枝 東京通信大学, 人間福祉学部, 准教授 (60454196)
加藤 泰久 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 教授 (60814960)
長沼 将一 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 助教 (70534890)
松浦 真理子 東京通信大学, 人間福祉学部, 助教 (80469436)
土屋 陽介 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 専任講師 (90447037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者向け「新型コロナ対策クイズ」動画 / ロボットが説明を行う「フレイル予防クイズ」動画 / ケアマネ支援アプリの開発 |
研究実績の概要 |
2020年3月13日に第一回目の緊急事態宣言が発出された後、多くの高齢者施設では、出入り禁止の措置が取られ、現在でもその状況は続いている。我々の研究は、高齢者施設の中で、ロボットとのコミュニケーションが高齢者に与える影響等の調査であったが、研究遂行は不可能になった。 そこで研究方向を変換し、COVID-19から身を守るために必要な事を、高齢者が好むクイズにして、コミュニケーションロボットが説明する「新型コロナ対策クイズ」動画を作成した。COVID-19対策を高齢者に勉強してもらうことは重要なので、施設側から好意的に受け取られ、対策クイズに対するアンケート調査やインタビューを実施することができた。その後、施設側から、アフターコロナに危惧されるフレイル(虚弱高齢者)に対し、クイズ動画作成の要望があった。高齢者はCOVID-19への感染恐怖のために家にこもりがちになり、体力や筋力の衰えや社会的交流の減少などからフレイルになり、そのまま要介護状態になる危険性がある。「フレイル予防クイズ」を作成して、同様に高齢者の観察を行ったところ、COVID-19クイズに比べて馴染みがなかった半面、より多くのことを吸収したようだった。 次に、ケアマネ支援アプリについてである。居宅介護においてケアマネジャー(以下、ケアマネ)は、要介護者の心身の状態を確認して報告書を作成することが業務の一つであるが、その作業に多くの時間を費やしている。そこで負担軽減策として、音声入力で作業効率を上げるアプリのモックアップを制作した。この特徴として、①記録の入力・編集・削除・検索が可能にした。②音声入力には、GoogleのAPIを利用した。③音声入力後の編集の手間をなるべく少なくするために、最初に候補を複数提示して、利用者が選択する方式を採用した。などが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、コミュニケーションロボットが発問/正解発表/解説を行う形式のクイズを作成し、高齢者に提供する実証実験を行った。クイズは「新型コロナ感染予防」「フレイル予防」の2つのトピックについて、行政の健康指導に準拠する内容となるよう作成した。クイズ後、アンケートおよびインタビュー調査を行った。調査では、①高齢者が健康に関する知識を増すことができたか、②クイズは幅広い層に受け入れられたか、③上記2点により、高齢者のQOL維持・向上に貢献したか、を明らかにすることを試みた。 東京都小金井市が提供する自立高齢者向け体操教室において実施した実験では以下のようなことがわかった。クイズは必ずしも当該トピックについての新たな知識を提供したとは言えないが、被験者があらかじめ持っていた知識を確認するという役割は果たした。コミュニケーションロボットによる説明は概ね好意的に評価された。ロボットそのものも「かわいい」と好評であった。健康情報を提供するためのクイズという形式も概ね好意的に受け入れられた。さらに、体操教室を担当する小金井市職員に対するフォローアップ・インタビュー調査において明らかになったが、クイズ実施時、被験者の様子には通常より緊張感があり、実験次週には「先週はがんばったね」などの感想が見られたとのことである。本クイズは高齢者に知的刺激を与え、健康情報の取得という意欲を引き出し、QOL向上に貢献したと考えられる。 ケアマネ支援アプリについては、利用頻度が高い「支援経過」を対象とし、音声入力機能と文字検索や編集が行いやすい機能に絞って開発した。「支援経過」とは、利用者の日々の記録であり、記録される情報は常に追加、編集、検索が必要なため、頻繁に閲覧、編集が行われることを想定して設計し、実機での操作性や利便性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
「新型コロナ対策クイズ」については、マスク着用、手洗い、3密を避ける、などの知識は世界的にも認知されるようになってきたので、「フレイル予防クイズ」のみを使って、日韓の国際比較を実施することを計画している。この研究計画のために2021年度は、旭川大学、保健福祉学部・コミュニティ福祉学科の任賢宰(イム・ヒョンジェ)先生に加わって頂くことにした。まずはコミュニケーションロボット(SOTA)に韓国語を言語追加し、「フレイル予防クイズ」の韓国語版を作成する。実際に研究実験場とするのは、韓国、ソウルにある社会福祉法人幸福創造(理事長 金玄勲)である。日本の高齢者はクイズ形式を好むが、韓国ではどうであろうか。インタビュー、アンケート調査を実施し、高齢者のロボットやクイズに対する受容性に、民族差は存在するのかを比較検討する。COVID-19の影響で、渡韓が不可能になった場合、2022年度に持ち越すことも視野に入れている。 ケアマネ支援アプリについては、三鷹市が興味を持ってくれているので、三鷹市が組織する事業者やケアマネが参加する会議で、我々の開発計画を披露し、実際にケアマネに使ってもらって、問題点や改良点を探っていくことになっている。 さらに2019年度から内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つ、AIホスピタルに協力参加機関となっているが、我々の研究対象である高齢者介護に、ここで共有している情報を利用してはどうかという提案を受け、独居高齢者に対する安否確認のシステムを開発することを計画している。独居高齢者がアバターと日常的な会話を行い、その動画を自動的に家族に配信すれば、高齢者の様子が把握できる。この研究に関しては、地域包括支援センター湘南鎌倉が協力してくれることになっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は「新型コロナ対策クイズ」「フレイル予防クイズ」の2動画を、沖縄「徳洲苑かふう」、札幌「徳洲苑しろいし」の両高齢者施設で実施し、高齢者のロボットやクイズに対する受容性を、東京での調査結果と比較し、地域差について検討するつもりだった。しかし当初承諾して下さっていた両介護施設から、新型コロナ感染者の多い地域であるため、訪問は不可にするという連絡があり、沖縄や札幌への旅費として計上していた費用が次年度使用になった。 2021年度の使用計画として、以下のものが挙げられる。①韓国での「フレイル予防クイズ」実施に対し、韓国版クイズ作成費、現地への研究調査旅費(2021年度の渡航が難しくなった場合は、2022年度への持ち越しになる可能性あり)、②ケアマネ支援アプリの操作性向上に向けてのアプリ改良費用、③独居高齢者の安否を確認するシステムの開発費用(アバター画面、対話サーバ、インフラ構築など)、④開発する安否確認システムの特許出願に関する先行技術調査費用とその特許出願費用。
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