研究課題/領域番号 |
19K11404
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
井上 茂樹 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40531447)
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研究分担者 |
加納 良男 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 教授 (70116200) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PC12細胞 / 薬剤高感受性PC12変異細胞 / PC12m3細胞 / 寒冷刺激 / 神経突起形成 / 神経突起形成率 / p38 MAPK / CREB |
研究実績の概要 |
我々は、アメリカのグリーンらが開発した神経分化能を有するPC12細胞から医療応用のために使用できる3つの細胞株を開発した。それらは、PC12細胞に薬剤処理を行うことによって出現したPC変異細胞で、それぞれPC12m3細胞、PC12m12細胞、PC12m321細胞と命名した。 PC12m3細胞は、いろいろな物理的、科学的刺激の情報をDNAに伝える働きをする細胞内シグナル伝達系に突然変異をもった特殊な神経細胞である。PC12m3細胞は様々な薬剤やいろいろな物理刺激に鋭敏に反応するので、新規医薬のスクリーニングや、物理療法における治療効果の検証を行うのに有効である。PC12m12細胞は、精神活動の発現に関係する神経伝達物質(アセチルコリン、セロトニン、ドパミン等)によって活性化するPC12変異細胞である。PC12m321細胞は、PC12m3細胞の中から熱抵抗性と活性酸素抵抗性を示す細胞を見つけて命名した。このPC12m321細胞はPI3Kに突然変異をもち、PI3Kは主としてインスリンによって活性化し、Aktを介してサバイバルの上昇や長寿遺伝子の活性化に働いている。 我々は医療応用のために使用できる3つの細胞株を開発し、近年における研究成果について纏めた。医療現場のニーズに応えてPC12変異細胞によって検出できるものとしては、増殖因子、化学物質、物理的刺激、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質などがある。PC12変異細胞を用いた各種因子の検出方法には、細胞分化、細胞毒性、細胞代謝、遺伝子活性等がある。今後は、各種PC12変異細胞を用いて健康寿命の延伸に寄与したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度における研究実施計画は、培養神経細胞における寒冷刺激効果の最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死量)、また閾値と致死量の範囲で神経突起形成が高まる量(最適値)の検討の補充、検証の終了、そして寒冷刺激における細胞内メカニズムの検証の終了を目標に検証を行った。 対象は、培養神経細胞であるPC12m3細胞とPC12細胞を用いて行った。具体的な方法は、寒冷刺激装置であるプログラム低温恒温器を用いて、刺激強度は0℃から10℃、刺激時間は0時間から168時間、刺激頻度は1回(連続)により実施した。効果判定は、神経突起形成率、細胞生存率、p38 MAPキナーゼと転写因子の検出を実施した。 研究成果は、p38 MAPキナーゼの活性化の検出実験は、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼ(phospho-p38 MAPキナーゼ)が有意に活性化する結果が得られている。さらに、寒冷刺激によるp38 MAPキナーゼの活性化の程度は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導のピーク値と一致する結果も得られてきている。PC12m3細胞を用いて3℃で5分間、4℃で30分間、5℃で120分間の寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼのリン酸化の程度は最も亢進する追試結果が得られてきている。PC12m3細胞を用いて長時間寒冷刺激の影響について細胞生存率から探求する実験を行い、PC12m3細胞に5℃の寒冷刺激を長時間与えたところ、未処理群と比べて15時間までの刺激時間では余りアポトーシスを観察しなかったが、72時間以上の刺激時間ではアポトーシスを多く観察する追試結果となった。 2021年度における研究実施計画に則り、各種検証を終了することができなかったため、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度における研究実施計画としては、2021年度に達成できなかった培養神経細胞における寒冷刺激効果の最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死量)、また閾値と致死量の範囲で神経突起形成が高まる量(最適値)の検討の補充・検証、および寒冷刺激における細胞内メカニズムの検証の終了を目指す。PC12m3細胞は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導にはp38 MAPキナーゼ経路の活性化が必要であることが推察されている。一方、細胞がわずか1℃の温度変化 を認識する方法を調査する必要があるため、p38 MAPキナーゼ経路の詳細な分析を実施する。 p38 MAPキナーゼの活性化の検出実験は、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼが有意に活性化する結果が得られている。PC12m3細胞を用いて3℃で5分間、4℃で30分間、5℃で120分間の寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼのリン酸化の程度は最も亢進する追試結果が得られている。我々は、PC12m3細胞を用いて高浸透圧およびマイクロ波照射などの刺激によってCREBの活性化を検出している。 CREBは、細胞増殖や分化、生存を含む多用な 細胞応答、細胞外刺激に対する細胞応答を媒介するさまざまなシグナル伝達経路の標的となる転写因子であり、PC12m3細胞を用いた寒冷刺激による CREBの活性化の詳細な分析の補充・検証をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、ストレス応答シグナル伝達経路である転写因子の活性化をウエスタンブロット法により検出して結果を取り纏める予定であったが、コロナ渦での活動制限および物品購入に支障が生じた。現存するデータ解析はすすめたが、解析する機器の不具合で多くの時間を割いてしまった。また、英語論文についての校正費は年度末までに投稿準備が完了できなかったため、部分的な計上となった。 次年度使用額の使用計画は、結果を解析するための高性能の機器及び消耗品の早期購入、ならびに現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。
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