研究課題/領域番号 |
19K11404
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
井上 茂樹 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40531447)
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研究分担者 |
加納 良男 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 教授 (70116200) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PC12細胞 / 薬剤高感受性PC12変異細胞 / PC12m3細胞 / 寒冷刺激 / 神経突起形成 / 神経突起形成率 / p38 MAPK / CREB |
研究実績の概要 |
リハビリテーションでは穏やかな冷却は、炎症、疼痛、浮腫の抑制、痙縮の減少、運動の促進などの効果を目指すために用いられている。寒冷療法に関する研究は、組織レベルの生理的側面だけではなく分子細胞学的な実験研究は多くあるが、培養細胞を用いた寒冷刺激効果を検証した報告はあまりない。そこで本研究の目的は、寒冷刺激が身体を構成している細胞にどのような影響があるかを検証することにあり、培養神経細胞を用いて寒冷刺激の効果を神経突起形成率から見出し、そのメカニズムについて分子生物学的に解明することである。我々はこれまでに、PC12m3細胞を用いてNGFと同時にカルシウムイオノホアや漢方薬などの薬剤の投与、熱ショックやUV照射などの物理的刺激により、高い神経突起形成が見られ、またさまざまな刺激によってp38 MAPキナーゼの活性化を示すことを報告している。また、他の同系の細胞での振動刺激を与える研究成果において、神経突起形成はp38 MAPキナーゼが関与していることを示唆する報告もした。PC12m3細胞は、各種物理的刺激を与えた先行研究により、CREB系路を介して神経突起誘導を引き起こす可能性が示唆されており、寒冷刺激も同様に細胞内シグナル伝達系が活性化し、その応答により神経突起の形成を促進したものと推察している。 本研究は、物理療法の1つである寒冷刺激の最適有効量を決定するための基礎となり、寒冷刺激の影響を分子生物学的に示すための重要な知見になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度における研究実施計画は、培養神経細胞における寒冷刺激効果の最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死量)、また閾値と致死量の範囲で神 経突起形成が高まる量(最適値)の検討の補充、検証の終了、そして寒冷刺激における細胞内メカニズムの検証の終了を目標に検証を行った。 対象は、培養神経細胞であるPC12m3細胞とPC12細胞を用いて行った。具体的な方法は、寒冷刺激装置であるプログラム低温恒温器を用いて、刺激強度は0℃から10℃、刺激時間は0時間から168時間、刺激頻度は1回(連続)により実施した。効果判定は、神経突起形成率、細胞生存率、p38 MAPキナーゼと転写因子の検出を 実施した。 研究成果は、p38 MAPキナーゼの活性化の検出実験は、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼ(phospho-p38 MAPキナーゼ)が有意に活性化する 結果が得られている。さらに、寒冷刺激によるp38 MAPキナーゼの活性化の程度は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導のピーク値と一致する結果も得られてきている。PC12m3細胞を用いて3℃で5分間、4℃で30分間、5℃で120分間の寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼのリン酸化の程度は最も亢進する追試結果が得られてきている。PC12m3細胞を用いて長時間寒冷刺激の影響について細胞生存率から探求する実験を行い、PC12m3細胞に5℃の寒冷刺激を長時間与えたところ、 未処理群と比べて15時間までの刺激時間では余りアポトーシスを観察しなかったが、72時間以上の刺激時間ではアポトーシスを多く観察する追試結果となった。 2022年度における研究実施計画に則り、各種検証を終了することができなかったため、本研究課題の進捗状況は遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度における研究実施計画としては、2022年度に達成できなかった培養神経細胞における寒冷刺激効果の最小の量(閾値)や細胞死を引き起こす量(致死 量)、また閾値と致死量の範囲で神経突起形成が高まる量(最適値)の検討の補充・検証、および寒冷刺激における細胞内メカニズムの検証の終了を目指す。PC12m3細胞は、寒冷刺激による神経突起形成の誘導にはp38 MAPキナーゼ経路の活性化が必要であることが推察されている。一方、細胞がわずか1℃の温度変化 を認識する方法を調査する必要があるため、p38 MAPキナーゼ経路の詳細な分析を実施する。 p38 MAPキナーゼの活性化の検出実験は、PC12m3細胞に寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼが有意に活性化する結果が得られている。PC12m3細胞を用いて 3℃で5分間、4℃で30分間、5℃で120分間の寒冷刺激を与えた場合、p38 MAPキナーゼのリン酸化の程度は最も亢進する追試結果が得られている。我々は、PC12m3 細胞を用いて高浸透圧およびマイクロ波照射などの刺激によってCREBの活性化を検出している。 CREBは、細胞増殖や分化、生存を含む多用な 細胞応答、細胞外 刺激に対する細胞応答を媒介するさまざまなシグナル伝達経路の標的となる転写因子であり、PC12m3細胞を用いた寒冷刺激による CREBの活性化の詳細な分析の補充・検証をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、コロナ渦からコロナ禍へとなりその後、落ち着きを取り戻しつつあったが、活動制限および物品購入に支障が生じた。研究は活動制限により、ストレス応答シグナル伝達経路である転写因子の活性化をウエスタンブロット法により検出して結果を取り纏める予定であったが未達となった。また、現存するデータ解析はすすめたが、解析する機器の不具合で多くの時間を割いてしまった。 次年度使用額の使用計画は、転写因子の活性化をウエスタンブロット法により検出して結果を取り纏め、研究結果を解析するための高性能の機器及び消耗品の早期購入、ならびに現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。
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