研究課題/領域番号 |
19K11407
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
井上 律子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20583826)
|
研究分担者 |
柳井 修一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60469070)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 運動野 / 老化 / 神経可塑性 / コエンザイムQ10 / 運動 |
研究実績の概要 |
運動機能は加齢に伴って低下する。その原因のひとつは運動に関わる脳(皮質運動野)の加齢変化に伴う機能低下であり、高齢者のリハビリテーションを難しくしていると考えられる。本研究では、老齢動物の運動野における可塑性と運動機能および運動学習低下の関係を調べ、ミトコンドリア補酵素であるコエンザイムQ10 (CoQ10)投与により老齢期の運動機能および運動学習の低下を改善する方法を探索する。 加齢に伴って低下する運動学習の神経基盤には、運動野の可塑性の性質変化が関係すると考えられる。老齢動物では、運動機能の低下、脳ミトコンドリア機能の低下、運動野の組織学的変化と電気生理学的変化がみられる。これらの加齢変化はCoQ10投与により回復する。研究代表者は、老齢動物の運動野においてCoQ10投与により増大するLTPを見出した。2019年度は、運動野M1とM2それぞれでLTPを誘導し、CoQ10投与により増大するLTPが領域依存的に生じていることを示した。若齢マウスと老齢マウスを用いて、加齢が可塑性に及ぼす影響も検証した。また、行動実験により筋力と動作速度を評価したマウスの脳ミトコンドリア機能を測定し、運動機能が向上している群では脳ミトコンドリア機能も向上していることを明らかにした。老齢マウスのコントロール群とCoQ10飲水投与群では筋力に差はみられないが、CoQ10飲水投与により動作速度とミトコンドリア機能が向上していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動学習の行動実験としてロータロッドの使用を当初計画していたが、老齢マウスに適したプロトコル作成に時間がかかっている。そのため、先行研究に倣った運動機能の行動実験と筋力を評価するワイヤハングテストを新たに追加して実施した。先行研究と異なる水溶化CoQ10製品を使用しても運動機能が向上することを示し、データに再現性があることを確認した。また仮説通り、CoQ10飲水投与による運動機能の向上に筋力が関係していないことを明らかにした。さらに行動実験を行ったマウスの脳ミトコンドリア機能を計測し、運動機能が向上している群では脳ミトコンドリア機能も向上していることを明らかにした。電気生理実験においては、運動野M1とM2を区別した上で記録を行い、加齢が可塑性に及ぼす影響、CoQ10投与の効果を検証できた。
|
今後の研究の推進方策 |
運動野の可塑性の解析については、CoQ10投与により増大するLTPの性質を明らかにすることから進めていく。ロータロッドを使用した運動学習の行動実験については、老齢マウスに適したプロトコルの作成に引き続き取り組む。運動学習の解析が難航する場合でも、ロータロッドを実施することによって可塑性の変化が生じている可能性があるため、電気生理学的解析を行う。またCoQ10投与の運動機能に対する効果をさらに検証するため、ヒトに応用しやすい知見を得られるような運動機能の解析、例えば歩行解析などを取り入れるか検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響から年度末の学会出張が中止になり、次年度使用額が生じた。翌年度分と合わせ、試薬等の消耗品と新たに必要となった解析用PCの購入、学会参加費等に使用する。
|