研究課題/領域番号 |
19K11413
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松崎 太郎 金沢大学, 保健学系, 助教 (10401910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 関節拘縮 / ラット / 加齢 / 線維化 |
研究実績の概要 |
加齢群は9週齢のWistar系雄性ラット12匹を1匹ずつケージに入れて飼育し、75週齢以上となったものを対象とし、対照群として11週齢のラットを用いた。両群共に飼育中は介入を行わずに飼育し、餌と水はふんだんに与えた。飼育期間終了後、麻酔下でラットの体重と膝関節の伸展制限可動域を測定し、安楽死後に下肢を股関節より離断して標本として採取した。採取した下肢は組織固定・脱灰後に右膝関節を正中線に沿って矢状面で2割し、中和を行いパラフィン包埋標本を作製し薄切後にHE染色および免疫染色を行った。 免疫染色は抗ウサギⅠ型コラーゲン抗体による染色、および関節包内の平滑筋細胞を抗マウスα-SMA抗体、血管内皮細胞を抗ウサギCD34抗体を用いた二重染色を行い、血管内皮細胞に隣接しない平滑筋細胞(筋線維芽細胞)の数を計測した。膝蓋下脂肪体(以下IPF)ではIPF全体の面積と脂肪及び組織間隙を除いた面積を計測しIPFにおける線維の割合を算出した。 結果、膝関節の伸展制限は加齢群で39.0±2.8度、対照群で30.3±2.7度と有意差を認め、加齢群の関節包は対照群と比較して関節包が肥厚し、線維の密生化、Ⅰ型コラーゲンの増生が確認された。関節包内の血管内皮に隣接しない平滑筋細胞数は加齢群0.8±0.8個、対照群は3.5±1.0個であり加齢群は対照群と比較し有意に低値を示した。IPF中の線維が占める割合は加齢群では85.5±2.6%、対照群では67.2±12.9%であり加齢群で有意に線維が占める面積が増加し、HE染色像では加齢群で脂肪細胞数が減少・萎縮または消失していると考えられる像が観察された。 加齢群の伸展制限角度が対照群と比較して高値であり、加齢群の関節包内の線維の密生化、Ⅰ型コラーゲンの増生の像が確認された。よって加齢ラットの膝関節伸展制限因子として関節包の線維化が挙げられると推測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
加齢により関節が「堅くなる」ことは経験上知られているが、関節構成体のどこがどのように「堅く」なるのかを病理組織学的に観察したものは報告されておらず、加齢により関節構成体がどのような変化を生じるのかを明らかにする目的で実験を行った。 筋の伸張性低下、関節のアライメント変化等による可動域制限の他に関節の軟部組織でも線維化が生じ、可動域制限の一因となっている可能性が示唆された。 現在、糖尿病ラットおよび加齢ラットの作成および組織像の観察は当初の計画通りに進捗しているが、次期の目標である「予防を目的とした関節可動域運動」を施行するための加齢ラットについて飼育数が足りない状況であり対処を急いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
加齢による関節構成体の変化と従来の研究で行って来た不動による関節構成体の変化は線維化として類似する部分があり、慢性炎症という概念で説明できる可能性が考えられる。 加齢ラットの作製(実験に必要な数を揃える)方法について再検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に参加を予定していた学会等の旅費を計上していたが、COVID-19の蔓延により中止またはWebによる遠隔開催となり旅費が大幅に減少したため実験の遂行に必要な抗体等の薬品および器具などを前倒しで購入したが次年度使用額が生じた。残高および令和3年度に請求する助成金については次年度の実験において消耗品などの経費に充てる予定である。
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