2022年度に行った加齢ラットに対する運動負荷実験の比較対象として若年関節拘縮モデルラットにトレッドミルを用いて運動負荷を行いて関節構成体の変化を観察した。 我々の先行研究に倣い9週齢のラット後肢を不動化して関節拘縮モデルラットを作成し、2週間の不動期間後に創外固定を除去して2週間のトレッドミルを用いた運動負荷を行う運動群、不動期間のみとした不動群、関節不動を行わない対照群を作成した。実験期間終了後に膝関節を採取し、膝関節の内顆中央部を通る矢状面で膝蓋下脂肪体および後部関節包、関節軟骨を撮影した。撮影した画像について病理組織学的に検討するとともにImageJを用いて膝蓋下脂肪体および関節包全体の面積を算出し、それぞれの組織中における線維の占める割合を計測した。 関節可動域は対照群に対し運動群、不動群で有意な減少を認めたが運動群と不動群では差は見られなかった。組織学的には不動群、運動群で膝蓋下脂肪体における脂肪細胞面積が減少するとともに線維増生が観察されたが両群に差は見られなかった。後部関節包では不動群、運動群ともに関節包の肥厚およびコラーゲン線維の密生化が観察され加齢モデルと同様の所見を得たが、運動負荷の有無による変化は見られなかったが、今回の実験では実験期間が短く運動負荷の効果が観察できなかった可能性が考えられる。 加齢ラット、関節不動モデルラットに共通した所見として膝蓋下脂肪体の萎縮、後部関節包の肥厚がある。膝蓋下脂肪体は血管や神経が豊富に存在しており機能低下は膝関節の機能障害につながる可能性があると報告され、加齢による慢性炎症と同様の機序が関節不動化により発現し、関節構成体に線維増生を促進することを示唆している。
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