研究課題/領域番号 |
19K11415
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 彩栄 京都大学, 医学研究科, 教授 (80321610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 認知症 / 運動 / マイオカイン / アミロイドβ / FNDC5 / irisin |
研究実績の概要 |
本邦では超高齢化の到来とともに、認知症患者が激増している。しかしながら、その原因疾患となるアルツハイマー病(AD)の根本的治療法はまだない。これまでの研究で、認知症発症の20年ほど前から脳内にアミロイドβ(Aβ)タンパク質が老人斑としてたまり始めているということが知られているため、preclinicalな時期からの「副作用のない」介入が望まれている。中でもアルツハイマー病に対する非薬物療法として運動介入のエビデンスが最も高い。しかしながら、どのようにして運動によりBACEが抑制されてAβが減少するのかという点は未解明であった。この機序について、我々は、運動により筋より放出されるmyokine(cytokineの一種)の影響が関与しているという作業仮説をたてた。実際に、myokineの1種であるFNDC5が、in vitroおよびin silicoでAPPのBACE切断部位の近傍に結合することを初めて見出した(Noda et al Molecular Brain, 2018)。また、FNDC5はAPPからのAβへの切り出しを著明に抑制することも明らかにし、報告した。それをさらに進めるため、2020年度は、in vitroの系のみならず、in vivoの系でも検証を進めている。これまでに、マウスに自発運動をさせることにより、血漿および筋肉由来のirisin (FNDC5より切り出されてできるmyokine)が大きく変動することを見いだしており、そのメカニズムについて検討している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の前半は、緊急事態宣言等の影響で、実験室への出入りが厳しく制限され、実験を担当している大学院生が数ヶ月参加できなくなってしまった。そのため、マウスの実験等の開始が遅れ、当初予定していたよりやや遅れている。しかしながら、2020年度の後半でかなり実験を進めることができた。今後は研究を加速させる予定であるが、現時点で、再び緊急事態宣言が発令されている地域であるため、研究の進捗については、今後のCovid-19の状況にも左右される。
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今後の研究の推進方策 |
現在続けているin vivoにおける研究を継続する。 マウスに自発運動をさせたときのmyokineの変動について再実験で確かめるとともに、運動の種類や期間がどのようにmyokineの放出に影響を与えるかを、まずirisinにおいて調べる。さらに、irisin以外に報告されているcathepsin Bなどにおいても検討を開始する。 それらのmyokineがアルツハイマー病の病態に及ぼす影響に関しては、in vitroでBACEの活性に影響を与えることを見いだしているが、vivoの実験でも検証する予定である。
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