研究課題/領域番号 |
19K11416
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
車谷 洋 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (00335647)
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研究分担者 |
砂川 融 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (40335675)
小池 康晴 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10302978)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シナジー / 協調運動 / 上肢 / 把持動作 |
研究実績の概要 |
今年度は,障害例の上肢運動シナジーの分析,シナジーパターントレーニングへの左右差の影響について検討した. 1. 橈骨神経低位麻痺と高位麻痺症例の術前,術後の経過を検討した.課題は到達把握運動とし,患側手の関節運動を計測し,運動シナジーを分析した.術前の上肢運動シナジーの時間パターンは健常成人と類似していたが,関節運動の貢献度は健常成人と異なり,麻痺筋の影響が確認できた.低位麻痺例では腱移行術が行われ,術後経過に伴い関節運動の貢献度は術前より改善し,健常成人に類似してきた.しかし,シナジーの時間パターンは術前とは異なり,健常成人よりも急峻な変化をするパターンに変わっていった.高位麻痺例では神経移行術が行われ,術後経過に伴い関節運動の貢献度は術前より改善し,健常成人に類似してきた.また,シナジーの時間パターンも術前と同様で健常成人に類似したパターンであった.以上より,神経障害の上肢運動シナジーは,関節運動の貢献度に変化が現れ,腱移行術のように解剖学的に筋の作用を変えた場合にはシナジーの時間パターンが変化すると考えられる. 2. シナジートレーニングに左右差の影響があるかを検討した.二球回転運動を課題とし,15回の連続したセッションを実施した.課題未経験の右利き健常成人を,15回の課題のみ実施,課題間に単純把握運動を実施,課題間にシナジーパターントレーニングを実施の3群に分け,さらに右手・左手実施の計6群に分類して,二球回転運動のパフォーマンスの向上の違いを検討した.結果,課題間にシナジートレーニングを実施した群は右手・左手実施群ともに,他群よりもセッション初期に有意なパフォーマンスの向上があった.以上より,シナジーパターンを利用したトレーニングの効果は手の側性に関わらず,動作習熟の初期に有用であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度までに,上肢運動のシナジーの左右差,日常生活動作時のシナジーの解明,障害例のシナジーの特徴の研究を実施した.結果,上肢運動は少数のシナジーで制御され左右差の影響をほとんど受けないこと,日常生活動作も少数のシナジーで制御され隣接関節間で協調するパターンをもつこと,障害例では関節運動の貢献度が健常成人と異なり,解剖学的に筋の作用が変化するとシナジーの時間パターンに変化が生じること,が分かった.さらに,シナジーパターンを利用したトレーニングは手の側性に関わらず動作習熟の初期に有用であると可能性を導くことができた. しかし,新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で,研究成果報告が順調に行えず,遅れが生じている.よって,やや遅れのある状態であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,進捗に遅れのある国内外の学術集会での研究成果報告,国内外の学術誌への論文投稿を行い,研究成果の報告を中心に行っていく.また,障害例の計測では,他の障害も含め計測を継続し,障害例の上肢運動のシナジー制御に関する知見の集積に努めていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大が続いていたため,研究成果報告が進んでおらず,旅費に計上した費用が次年度使用額となった.この次年度使用額は研究成果報告に当てるとともに,障害例の計測上必要な消耗品等に当てて,さらなる研究の発展を図る.
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