研究実績の概要 |
本研究の目的は, 認知症者に対してより効率的・効果的なリハビリテーションプログラムを構築するために, 重症度・居住形態別の日常生活 (Activities of Daily Living; ADL)障害の要因を明らかにすることである。R元年度は, スタートアップ支援での継続課題で, 重症度別・居住形態別のADL障害に関連する国内外の知見をレビューし, 研究施設の確保を進め, 比較対象となる健常者のデータ収集を進めた。 国内外の知見として, 認知症者のADL障害に関連する因子は認知機能障害や身体活動量をはじめ, 妄想や昼夜逆転などの行動心理学的症候,栄養障害,並存疾患の有無,睡眠-覚醒リズムなどの要因も指摘されている。特に近年, 新たにADL障害の指標として注目されている身体活動量や睡眠-覚醒リズムを含めた研究が不足していることが明らかになった。そのほか, 重症度に応じた評価指標を用いる必要性を改めて確認できた。認知機能障害等の既存の評価指標については, これまで研究者らも同様の研究を進めていたため, これまでに使用してきた評価指標を継続して使用し, 研究を進める予定である。 まず, これまでの研究が不足している身体活動量や睡眠覚醒リズムとADL障害との関連性を明らかにするために, アクティグラフ(GT3X)を用いて, 居住形態(主に在宅)・年代別の健常者データを収集している。健常者データは計20名収集できている。現在収集できている対象者は, 健常者であるためADLは障害されていない。そのため, 身体活動量や睡眠覚醒リズムと明らかな関連性は各年代ごとには不明であるが, 先行研究では, 加齢に応じて午前中の活動量の低下, 日内分断性, 日内安定性の低下等の障害が指摘されており, 70代以降の健常者データも引き続き収集し, ADLが障害されはじめる時期との関連性を分析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ADL障害に影響を及ぼす要因は, アクティグラフは各対象者に1回の評価につき最低5日間以上連続して装着することが推奨されており,1人の患者あたり1週間装着することとしているが, 実際には装着後入浴時の装着忘れや, 夜間の不快感などによる装着拒否などがあったため, 入浴時でも装着可能なアクチグラフ(GT3X)を購入した。そのため, 現在購入できる台数としては, 3台までに止まっている。 認知症者に対するデータ収集は, 1つの病院でスタートアップ支援から継続的に行なってきたが, 研究協力者の異動などもあり, 現在データ収集ができなくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は, アクチグラフの台数を増やし, 健常者データを収集してR2年度末までに20代から80代までの各年代10名以上, 合計80名収集を目標とする。 認知症者に対するデータ収集としては, 新たに2病院, 介護老人保健施設1施設, 訪問看護ステーション1施設に現在研究協力依頼を行なっている状況であり, 来年度より居住形態別にデータ収集を開始する予定である。また, 新たに研究協力者を追加召集している段階である。
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