研究実績の概要 |
本研究の目的は, 認知症者における重症度・居住形態別の日常生活 (ADL)障害の要因を明らかにし, 効果的なリハビリテーション戦略を構築することである. R2年度は, 昨年度からの継続で, 重症度別・居住形態別のADL障害およびリハビリテーション介入戦略に関連する国内外の知見をさらにレビューし, これまでの知見の論文発表と病院および在宅での予備的研究を行なった. まず, 重症度別・居住形態別のADL障害について, 我々はこれまでからのデータをもとに中等度・重度者のADL障害の要因について調査結果を報告した(Tanaka, et al., 2019, Ishimaru and Tanaka et al., 2020). 結果として, 中等度・重度者においては認知機能障害に加えて, agitation, 栄養障害, 睡眠覚醒リズム障害(日中の活動量・質の乏しさ)がADL障害に影響を及ぼしていることをを明らかにした. 次に, リハビリテーション介入戦略においては, 軽度から中等度の初期段階で有効とされている目標指向的・工程分析に基づくADL改善プログラムの方法を踏襲・修正した介入戦略を立案し, 在宅での中等度の初期段階の一事例に対して予備的に行なった. 結果としては, 本人・家族の目標として掲げられたADLが改善し, 認知機能が維持されたことを確認できた. 中等度から重度段階において, 効果的なADL障害の介入法を明らかにするための調査を実施した. 方法として, 40名の重度認知症者の1年間経過観察を行い, どのようなリハビリテーション戦略が有効かを分析した. 結果として, 脳血管性認知症に対しては, 主に血管内治療のための薬物療法と活動性向上や食事能力の改善を目的とする介入を併用することが重要であることが考えられた (Tanaka, et al., in press).
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