研究実績の概要 |
本研究の目的は, 認知症者における重症度・居住形態別の日常生活 (ADL)障害の要因を明らかにし, 効果的なリハビリテーション戦略を構築することである。在宅での軽度段階においては, 認知機能障害を評価したうえでの生活工程分析による介入が有効であったことを昨年度の成果であった。 R3年度については, 入院中の中等度・重度段階の認知症者を対象とし, 昨年度明らかにしたADL障害の要因の一つであるagitationに対して介入を試みた。しかしながら, 予備的研究を進める上で, 音楽療法などの介入によって一時的にagitationの軽減はできたが, 成果は十分でなかった。その原因としては, 交絡要因が存在していたことであった。交絡要因として考えれたのは, 「介入に対する取り組み方(engagement)の評価」「日常生活上のケアの質」が考えられ, これらの交絡要因を評価指標に加えて介入研究を計画する必要性が示された。しかしながら, 国内では, engagementの評価指標や認知症の人が受けているケアの質を評価する指標は筆者らの知りうる限り存在しなかった。そのためR3年度では, 中等度・重度認知症の人向けの介入の効果を測定するうえで重要な検討すべき要因と考えられているengagementの評価指標を作成する研究を行なった。 作成した評価指標をAssessment Scale of Engagement to Activities for moderate to severe dementia(ASEA)とし, 195名の中等度・重度認知症者に対して信頼性・妥当性の検証を行い, 臨床的に有用である結果となった(Tanaka, et al., 2021, 2022)。ASEA得点とagitationは有意に関連するものであり, 介入研究のための交絡を補填するものであると考えられた。
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