研究実績の概要 |
本研究の目的は, 認知症者における重症度・居住形態別の日常生活 (ADL)障害の要因を明らかにし, 効果的なリハビリテーション戦略を構築することである。昨年度は, 入院・入所中の195名の中等度・重度の認知症者を対象とし, agitationに対して介入を試みたが, 成果は十分でなかった。その原因としては, 交絡要因が存在していたことであった。その交絡要因とは, ①「介入に対する取り組み方(engagement)の評価」②「日常生活上のケアの質」が考えられた。 まず, ①に対しては昨年度にengagementの評価指標を開発し, 信頼性・妥当性を担保した(Tanaka, et al., 2021, 2022)。engagementを高めることができる介入手段がagitationの軽減を導くものであると仮説立て, 現在予備的研究として20名の認知症者に対してリハビリテーション介入を実施した。その結果, engagementが高い対象者ほど介入によるagitationが有意に軽減する可能性が示された。今後は対象者数を増やしてさらにengagementとagitationとの関連性を分析する予定である。 次に②に対しては, 「日常生活上のケアの質」に対しては, アンケート調査を通してagitationを軽減しうる「ケアの具体的手法」を明らかにした。具体的には, 看護師, 介護士, ケアマネージャー, 療法士700名程度に対して, 各ADL場面でagitationを軽減しうる具体的な接し方について尋ね, 認知症に対する主観的理解度と具体的な接し方との関連性について分析した。その結果としては, 主観的理解度が高い, つまり認知症に対して理解度が高くケアが良い対象者は, 「介助工程ごとにその動作を認知症の人に説明する」などより具体的な接し方, 介助方法を実践していることが明らかになった。
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