研究実績の概要 |
本研究の目的は, 認知症者における重症度・居住形態別の日常生活 (ADL)障害の要因を明らかにし, 効果的なリハビリテーション戦略を構築することである。昨年度までは、engagementの評価尺度の開発とengagementを高める介入がagitationを軽減できるものかを予備的に検討した。結果として, 30名の対象者で検討し, engagementの水準の高さとagitationは関連性が認められた. つまり, 入院・入所中の認知症者に対してengagementを高めることがagitationを軽減させるのに有用であると示唆された。さらに, 文献研究を通して, engagementの水準を高める要因を調査したところ, 「興味関心などの個人的要因」「騒音などの環境的要因」「音楽が持つそのものの刺激といった介入そのものが持つ特性」の3種類の要因を評価し, 認知症者の個別の特性に合わせた適切な組み合わせを考えることがengaggementを高めると推測できた。現在、共同研究者とともにさらにこれら, engagementに関連する要因を探索中である。 次に、ADL障害に関連する要因として, 「日常生活上のケアの質」を考えていた。一昨年度から進めてきた研究で、医療・介護従事者にADLの維持・向上に寄与する具体的な接し方について明らかにした。その結果としては「介助工 程ごとにその動作を認知症の人に説明する」などより具体的な接し方, 介助方法を実践することが重要であった。これらを会話, 起居移乗, 排泄, 更衣・入浴, 食事, といった場面ごとに分析し, それぞれ違う結果を得た。 研究期間全体の成果としては, 認知症リハビリテーションにおいては, 重症度・居住形態だけでない新たな交絡要因があることを明らかにでき, 現在, 交絡要因を含めたADLとの関連性を調査している。
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