研究課題/領域番号 |
19K11422
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
飯泉 智子 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 助教 (10445942)
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研究分担者 |
小野 高裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30204241)
皆木 祥伴 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (30755351)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 治療プログラム / 摂食訓練 / 舌圧 / 嚥下動態 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究目的は,これまでの研究成果をベースに「摂食嚥下障害患者に対する摂食嚥下機能測定プロトコール」を作成することであった.まず「先行研究を基にした測定機器の設定,実施方法に関する検証」では,国内外の文献レビューを行うとともに,本研究に使用する測定機器を開発した分担研究者と共同し,摂食嚥下障害者を対象とした測定の実施に関して検証を行った.次に「測定プロトコールの作成」では,パーキンソン病以外の原因疾患による摂食嚥下障害患者に対する調査を実施するに先だって,北海道内の摂食嚥下リハビリテーション実施医療施設の協力のもと研究対象者および測定条件に関する詳細な情報収集と検証を開始した.活動開始後,北海道内でCOVID-19の感染者が確認され,感染防止の観点から調査を中断したことから,当初の予定よりも収集した情報量は限られたものの,先行研究の研究者らの知見や経験を加味し,多様な疾患,多様な測定条件における実験の遂行に必要な検証を進めた.プロトコールの予備的検討については,COVID-19感染防止で実施が困難であった.それに代わり,大阪大学歯学部の皆木博士がおこなった先行研究のデータを利用し,最大舌圧の分析,各測定点における圧発現の時系列分析,舌圧発現と嚥下運動の時系列分析を行い,舌口蓋接触と嚥下の協調性について予備的検討を行った.その結果,嚥下運動の測定に関するプロトコール作成に新たな課題が見いだされた.すなわち,本研究の測定の開始に先立って,原因疾患別特性を踏まえて検証を重ね,舌口蓋接触と嚥下の協調性を測定するためのプロトコールの調整を行っている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究目的である「先行研究を基に測定機器の設定,実施方法に関する検証」については,当初の研究計画通りに,国内外の文献レビューや本研究の測定機器開発者と共同して行った検討,調査に協力くださる医療機関等における情報収集,それにともなう意見交換を実施した現状を鑑み,「順調に進展している」と判断した.当該年度のもう一方の目的である「測定プロトコールの作成」について,北海道内のリハビリテーション実施医療施設における実施検証を予定していたが,COVID-19感染防止の観点から,今年度は先行研究のデータを用いて検証を行った.このことによって,原因疾患別の摂食嚥下障害患者に対して,舌口蓋接触との協調をはかる嚥下運動の観察を用いた調査を行うにあたり,先行研究で用いられたプロトコールを基に,本研究の測定環境に応じたあらたな調整を必要とすることが明らかとなった.すなわち,多様な臨床環境における検証によって新たな課題も見えてきたことにより,今後,実施する摂食嚥下障害者を対象とした測定での使用を考慮し,プロトコールの一部を調整することとした.この調整はプロトコール完成に向けた重要なプロセスであると考えられ,本研究は「概ね順調に進展している」と判断した.以上のことから,現在までの進捗状況について「(2)おおむね順調に進展している」と総合判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,「詳細な治療プログラムの作成」に着手する.まずは,国内外の文献レビューを行い,加えて,摂食嚥下治療に長年従事し,豊かな経験を積んだ言語聴覚士等に対してインタビューを行い,摂食嚥下機能改善を目的とした摂食訓練プログラムの要点を抽出する.加えて,道内の摂食嚥下リハビリテーション医療施設において予備実験を計画している.なお,COVID-19感染拡大防止の観点から,国内・国外の有識者に行うインタビューについては移動を伴う面談・会議による方法を避け,ICTの積極的な利用を心がけることとする.また,予備実験の実施にあたっては,感染対策に万全の対応をとり,必要に応じて,実験参加者,実験規模,実施時期についても柔軟に対応する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大防止の観点から,医療機関における調査の当該年度実施分の規模を縮小した.次年度において当初の計画にそった規模の調査を行う予定であり,当該助成金はそれに充当する予定である.
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