女性特有の骨盤底障害(下部尿路機能障害、骨盤臓器脱、排便障害)の罹患率は高く、女性骨盤底外来受診患者の70%が何らかの行動制限により対処していた。また女性は下部尿路症状によって医療機関を受診する率が男性の1/5で、男性の3倍行動制限をして対処していることが明らかになった。これらの行動制限はサルコペニア・フレイルといった老年症候群の一因ともなり得ることがわかった。 骨盤底障害の代表である、骨盤臓器脱修復術を行った場合、術後3ヶ月目では術前と比較して筋力(握力にて評価)、身体機能(歩行速度として評価)が有意に改善することが明らかになった。一方、骨格筋量は術後1ヶ月目で有意に低下したが、3ヶ月目で術前のレベルまで改善した。また骨盤臓器脱患者では他の骨盤底障害患者(腹圧性尿失禁や過活動膀胱患者など)と比較して有意に骨格筋量が低値であった。このことは骨盤臓器脱は他の骨盤底障害と比較し、より行動制限をしているため骨格筋量が低下していると考えられた。 かかりつけ医を含めた医療者(看護師、薬剤師など)において骨盤底障害の相談を受ける機会は多く、多くの医療者は骨盤底障害に対する治療は重要であると認識していたが、具体的な治療の詳細や骨盤底障害自体に関しての知識は乏しく、一般市民のみならず、医療者も含めた骨盤底障害の知識の普及は骨盤底障害患者のQOL向上のみならず、老年症候群を予防し健全な社会の維持に重要であることが示唆された。
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