従来の電動義手では人間の骨格系と異なるリンク構造を持っているのでシリコン皮膚を被せるだけでは皮膚の歪みが生じてしまい、患者が敬遠する問題点がある。本研究では、外観上本物の手と同様な多自由度電動義手を開発した。 令和元年度には解剖学に基づいて指骨と関節を新しく設計し、3Dプリンターを用いて製作を行った。3Dスキャンされた骨モデルは日本人男性の標準サイズの約1.1倍(身長約190㎝男性)の大きさで設計した。さらに、解剖学に基づいて腱鞘や腱と靭帯の再現を行い、各骨や関節に付けた。編み形状の腱は義手の手首に取り付けた6個のアクチュエータを用いて制御を行った。モーションキャプチャによる義手の把握性能を調べた結果、TVリモコンやペットボトルや鍵など20種類の物体の把持に成功した。 令和2年度では光造形式3Dプリンターを購入したので材料をABS材からUVレジン材に変更した。これにより、指骨をより細かい部分までナチュラルかつ機能的な面を考慮して再設計することが可能になった。さらに、手首のモデルの設計も行い、球関節を手根骨の内部に埋め込むように設計した。さらに、人間のように粘弾性制御を行うためには各関節に伸筋と屈筋のペアが必要であり、複数の伸筋と屈筋を表す各モータを同時に制御するため、20chモータコントローラーの設計・製作を行った。 令和3~4年度は親指と人指し指で細かいピンチング作業が可能な指ロボット義手を開発した。提案した電動義手について、弾力を持つ角度計測センサを用いて、人間の手と同様に機能するかどうか角度検出の検証実験を行った。また、力センサを使用して義手の指の力を人間の指の力と比較した。同程度の女性の指の力(最大6.19N)と比較した結果、44%(2.68N)を発揮することができた。人間のように複数の伸筋・屈筋を同時活性化することで関節の角度や硬さを制御できた。
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