研究課題/領域番号 |
19K11437
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 要一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50345063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ボール投げ / 冗長性 / 協調 / 関節運動 / 運動計画 |
研究実績の概要 |
これまで、冗長性のある運動において遂行変数を協調して変動させることによって目的とする結果変数を安定化させていることが、歩行などの周期的運動や単一の運動の反復課題において示されてきた。しかし、対人競技などにみられる瞬時に適切な対応を選択する必要がある状況において、遂行変数間の協調がどのように変化するのかは明らかになっていない。本研究の目的は、座位でのボールの上手投げと卓球のフォアハンドドライブについて、複数の選択肢から選択を要求される状況において、予め決められた運動を行う場合と比較して遂行変数間の協調性がどのように変化するかを明らかにすることである。 本年度は、まず座位でのボールの上手投げの実験系の構築を行った。ミニバスケットボールに対して、LEDによって狙うべきバスケットを合図し、ブザー音によって動作開始を合図するシステムをArduinoを用いて作成した。 男性12名について(野球経験者4名とボールの上手投げまたはそれに類する動作を含む競技未経験者8名)、座位でのボール上手投げの実験を行った。被験者が椅子に腰かけた状態で足の先端から前方2.5m、3m、3.5m、4mの距離にゴールの中心が来るように4つのミニバスケットを置いた。被験者は次の4条件でバスケットを狙ってテニスボールを20球ずつ投げた。条件1はランダムに提示される2つの的についてあらかじめ的の位置が提示される場合、条件2は条件1について的の位置が提示されるタイミングが動作開始合図と同時である場合、条件3は同じ的に上手投げと下手投げのいずれかで投げ、運動技法の提示のタイミングが動作開始と同時である場合、条件4は条件2について的の数が4つである場合であった。 現在リリースパラメータの協調性をランダマイゼーションの手法を用いて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ボールの上手投げ課題について、狙うべき的の位置を提示するタイミングを変化させる実験系を構築できた。また、被験者12名について、ボールの上手投げ課題で、的の数が2つと4つの条件で、狙うべき的の位置を提示するタイミングの変化が運動の協調性に及ぼす影響を調べる実験を実施し、それらの運動について体表面に貼付した反射マーカの位置データを取得できた。したがって、おおむね順調に推移しているが、野球の経験者については被験者数が不足しているので追加で実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られているデータについて解析を進める。野球経験者について被験者数を増やすために追加の実験を行う。現在得られたデータによれば、狙うべき的を提示するタイミングの影響が協調性の変化に与える影響が当初予想していたよりも小さい可能性が示唆された。したがって、結果次第では未経験者についても被験者数を増やすための実験を行う予定である。さらに上肢の関節運動についてもその協調性を評価する。 さらに卓球のフォアハンドドライブの実験を行うための実験系の構築を進める。複数の条件を設定するためにArduinoを用いることが最適でないことが分かったので、Matlabなど別のソフトを用いてシステムを構築できないかを検討する。実験系の構築が終了し次第、卓球のフォアハンドドライブについて実験を行う。 この報告書を作成している時点で、新型コロナウイルスの影響で、実験を行える時期の見通しが立たないが、実験以外に実施可能である議論の方向性についての考察や関連する研究の文献調査などを進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務のため、国際学会への参加を見送ったことおよび座位でのボール投げ実験における野球経験者について、必要な数の被験者の実験が終了していないことが主な理由である。翌年度に必要な実験を行い、被験者謝金ならびに実験補助者謝金として使用する予定である。
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