研究課題/領域番号 |
19K11437
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 要一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50345063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 冗長性 / 運動の協調 / 投球動作 / 正確性 / 運動計画 |
研究実績の概要 |
ヒトの多くの関節運動は、目的とする結果変数の数と比較して課題の遂行に利用できる運動の自由度が多いという意味で冗長性を有している。先行研究では、このような冗長性のあるの課題のうち、歩行などの周期的運動や単一の運動の反復課題において、遂行変数を協調して変動させることによって目的とする結果変数を安定化させていることが示されてきた。対人競技などでは変化する周囲の状況に合わせて瞬時に適切な対応を選択する必要がある。このような状況において、遂行変数間の協調がどのように変化するのかは明らかになっていない。本研究は、座位でのボールの上手投げと卓球のフォアハンドドライブについて、複数の選択肢から選択を要求される状況において、予め決められた運動を行う場合と比較して、遂行変数間の協調性がどのように変化するかを明らかにすることであった。 本年度は、野球・ソフトボール経験者を被験者とした追加の実験と卓球のストローク動作について複数の選択肢がある状況における運動の協調を調べる実験を行う予定であった。しかし新型コロナウイルス感染症による活動制限により、必要な被験者を集めることができず予定していた実験を行うことができなかった。 これまでに得られた12名分のデータについて、ボールのリリース変数レベルと上体の運動学レベルでの協調を調べ、複数の選択肢があることの影響を検討した。その結果、ボールのリリース変数に関しては、選択肢の性質によって協調への影響が異なることが示唆された。上体の運動学については、手の位置の安定化に関わる協調については個人差が大きいこと、手の速度の安定化にかかわる協調については、そもそも複数の選択肢がない場合においても協調の程度が低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症に伴う活動制限により、実験の被験者を集めることができず予定していた実験を行うことができなかった。 これまで得られた分析結果から、投距離が異なる複数の選択肢がある状況では、選択肢がない場合と比較して協調性に有意な影響を与えない可能性が示唆された。複数の選択肢についてより包括的な状況を設定した研究を行う必要があると思われた。したがって、当初予定した卓球のストロークにおける複数の選択肢がある場合の運動の協調を調べる実験に変えて、的の方向や動作の強度などより広い選択肢の状況を設定した実験を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、野球・ソフトボール経験者を対象として追加の実験を行い、投球経験の有無が複数の選択肢に瞬時に対応する必要がある状況における運動の協調に与える影響を明らかにする。次に、新たに考案した包括的な複数の選択肢を設定した実験を行い、複数の選択肢に瞬時に対応する必要がある状況における運動の協調について、知見を得る。複数の選択肢がある状況では、動作開始前に脳内に複数の運動計画が表現されていると考えられるため、正確な投球運動の実行のための神経制御メカニズムに関わる示唆が得られることが期待される。得られた知見をまとめ、国際誌に投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による活動制限の影響で、予定していた実験を行うことができなかった。そのため、被験者謝金や実験補助者謝金の支出がなく、次年度使用額が生じた。次年度は、2つの実験を行い、そのために被験者謝金と実験補助者謝金を支出する。また、得られた知見を国際誌に投稿するために英文校正費を支出する。
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