フェイント動作はあらゆる対人競技でみられる重要かつ有効な対人技能である.本研究は,1対1の対人競技である剣道におけるイベントのフェイント動作を対象にして,動作の重要点を解明する試みである.その重要点の発見は,運動やスポーツの科学や教育のために有意義なものとなる.これまで,1)フェイント動作による攻撃は,普通動作と比較したときに,動作開始距離が遠くなっても,攻撃の成功率が低減しないことや,動作解析において,2)普通とフェント動作の両方の攻撃で竹刀を相手に近づけて,どこを攻撃するか相手に知らせないようにする隠蔽動作を取り入れていること,3)隠蔽もフェイント動作も,遠い動作開始距離では相手に近づいて長く動作をするように調整すること,4)フェント動作での攻撃では,相手の誤反応を誘発するだけではなく,反動動作を利用して,打突動作の速度を高め,運動時間を短くすること,などを示した.最終年度は,フェイント動作の熟練度による相違を解明した.16名の剣道選手を対象にして,総当たり方式の対戦実験をして,攻撃成功率の高低によってグループ分けをした.その後,選手に2種類の普通動作による攻撃と2種類のフェイント動作による攻撃を10試行ずつ実施させ,モーションキャプチャシステムを使って動作を撮影した.現在は,フェイント動作と普通動作の類似性,フェイント動作の方向・速度・加速度,フェイント動作から普通動作への切替動作の特徴などに焦点を当てて分析を進めている.
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