研究課題
近年、我々は、運動がもたらす抗うつ作用や海馬における神経新生の促進作用のメカニズムに関する研究によって、運動によるこれらの効果には、セロトニン3型受容体が重要な働きをしていることを明らかにしてきた。そこで本研究においては、セロトニン3型受容体を介する作用に着目し、前年度までに、セロトニン3型受容体を介する海馬の神経新生促進作用、および抗うつ作用の分子メカニズムに関する解析を行った。その結果、セロトニン3型受容体が、海馬に存在している神経幹細胞の増殖や、神経幹細胞から神経細胞への分化を促進することを明らかにした。また、マウスを用いたうつ行動の解析により、セロトニン3型受容体を介する抗うつ作用が、既存の抗うつ薬の作用メカニズムと異なることを示した。そして本年度では、うつ病モデルマウスを導入し、セロトニン3型受容体を介するメカニズムの検討を行った。まず、当該モデルマウスが、野生型マウスと比較して、うつ状態にあり、さらに海馬の神経新生が減少していることを示し、うつ病モデルとなりうることを確認した。次に、うつ病モデルマウスにおいて、セロトニン3型受容体を刺激すると、海馬における神経新生が増加し、さらに抗うつ効果が得られることを明らかにした。一方、海馬の神経新生促進作用や抗うつ作用は、セロトニン3型受容体アンタゴニストを同時に投与すると阻害された。本研究によって得られた成果は、今後、うつ病に対する新たな治療薬の開発につながることが期待できる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件)
NeuroReport
巻: 32 ページ: 386-393
10.1097/WNR.0000000000001607
The FASEB Journal
巻: 35 ページ: -
10.1096/fj.202002383R
Translational Psychiatry
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41398-021-01358-y
Frontiers in Medical Technology
巻: 3 ページ: -
10.3389/fmedt.2021.665506
Digestion
巻: 102 ページ: 516-526
10.1159/000509209
Scientific Reports
10.1038/s41598-021-96596-x