研究課題/領域番号 |
19K11442
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
福山 博文 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (40409537)
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研究分担者 |
内藤 徹 同志社大学, 商学部, 教授 (90309732)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツ観戦行動 / 損失回避性 / Uncertainty of Outcome |
研究実績の概要 |
本年度は本研究課題の主要テーマであるプロスペクト理論を用いたスポーツ観戦行動の研究を行った。具体的には,スポーツ観戦のような結果に不確実性が伴う状況下において,プロスペクト理論の損失回避性という性質を経済主体がもつ場合のスポーツ観戦行動モデルを構築した。損失回避性をもつ観戦者はホームチームが勝利したときの満足よりも敗戦したときの苦痛の方を強く感じるため,試合結果の不確実性が大きい場合は試合観戦に行かないという選択肢を選ぶ傾向が強くなるというものである。その一方で,伝統的なスポーツ・エコノミクス分野においては,観戦者は損失回避性ではなく,むしろ不確実なゲーム結果を好むというUncertainty of Outcome Hypothesis(以下,UOH)が成り立つことが主張されてきた。本研究では,観戦者のUOHと損失回避性の両方を考慮した上でのモデル構築を行い,損失回避性の程度がリーグの競争バランスやチームの利潤にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしている。
分析の結果は以下の通りである。第一に,損失回避性の程度が大きくなるにつれ両チームとも均衡投資水準(戦力補強費など)が低下することを示した。第二に,損失回避性の程度が大きくなるにつれ,観戦者が損失回避性をもつ場合の方がUOHをもつ場合よりもリーグの競争バランスが良くなることが分かった。第三に,観戦者が損失回避性をもつ場合の方がリーグの競争バランスが改善されるため,UOHをもつ場合よりも両チームの利潤は大きくなることが明らかになった。
本研究のこれらの結果は,もし観戦者が損失回避性をもつのであれば,リーグの競争バランスは望ましいものになり,各チームの利潤も大きくなるため,収入配分ルールやサラリー・キャップなどの介入は適度に実施されるべきであるという政策的含意を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究はスポーツ観戦者が損失回避性をもつのか、UOHをもつのかによって,各チームの投資水準や利潤,リーグの競争バランスにどのような影響があるのかを理論的に明らかにしており,おおむね順調に進んでいる。
一方で,今年度もコロナ禍により直接会って研究分担者と打ち合わせをすることができず,日本のスポーツ観戦者が損失回避性あるいはUOHをもつのかを実証的に示すところまでは行かなかった。ただ,Zoom等を使ってそれなりに細かいところまで議論をすることはできたので,次年度もZoom等をうまく利用し,研究打ち合わせや学会に参加したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究最終年度であるためスポーツ観戦行動を実証的な観点から考察し,研究をまとめていく。そのため,研究分担者とは頻繁にZoom等を使って研究打ち合わせを行う予定である。そして明らかになった研究成果は国内学会あるいは国際会議で発表し,最終的に国際的な学術雑誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度における研究計画はある程度予定通り進められたが,702,585円の差額が生じた。これは,研究分担者との研究打ち合わせのための旅費および成果発表のための国際学会参加にかかる旅費として計上していたものだが,新型コロナウイルスの影響のため中止となったためである。この点については,Zoom等を使って研究分担者と研究打ち合わせを行ったため,研究計画に遅れは生じなかった。 (使用計画) 次年度に繰り越された702,585円は,遠隔会議をスムーズに進めるためのマイクやヘッドホン等の消耗品,現地調査に行って収集予定であった資料に代わる関 連書籍および文献の購入費用として使用する予定である。
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