本年度は、新たに4名の若年成人(男子大学生)について、これまで同様に夏季(8月)の7時30分(AM)と18時(PM)に55%HRmax下のランニング運動を負荷し、その前後の血栓形成関連因子(VWFとADAMTS13)の測定を行い、昨年までの測定結果に追加することで、血栓化の始まると考えられる運動強度閾値が時間や季節の影響で変動するかについて明らかにした。 その結果、いずれの季節(夏季・冬季)、時間(AM・PM)においても運動による血栓形成関連因子の変動には統計的な差は認められなかった。このことは、今回設定した運動強度閾値(55%HRmax)下の運動において血栓傾向に変動は見られず、季節・時間の影響は受けないことを示す結果となった。しかしながら、冬季はAM、PMとも運動前からVWFが高値を示し、その傾向はAMに顕著であった(冬季vs夏季:121.1% vs 99.4%)。血栓化の指標であるV/A値(VWF/ADAMTS13)も同様で、冬季のAMに最も高値を示したことから、運動実施の際には十分に考慮する必要がある。 また今年度は運動前に血栓化傾向の最も高い状態にあった冬季のAMにおいて強度閾値を超える中等度運動(60%HRmax)を負荷し、血栓形成関連因子の変動について測定した。運動後のVWFは159.8%と高値を示す結果であった。このときのV/A値は1.67と、強度閾値下である55%HRmax下の1.26を大きく上回る結果を示した。運動実施時の強度設定には十分な注意を払う必要性が示唆された。
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