本研究の目的は、Muscle Contraction Sensor(MCセンサー)法を用いて動的運動中の筋及び腱の活動動態を捉え、それらが筋パワー発揮に及ぼす影響について検討し、競技力向上を狙いとしたトレーニングプログラム作成や、筋・腱のコンディショニングチェックに有用な情報を得ることである。 令和4年度は、MCセンサー法を用いて、動的なペダリング運動中の膝伸展筋群の活動特性を評価するとともに、異なる運動強度によって各筋の活動とペダルに加えられる力との関わりについて検討した。ペダリング運動は、エルゴメーターLode Excalibur Sportを使用し、80rpmの一定速度で100W、200W、300W及び400Wの強度で30秒間ずつ連続的に行わせた。ペダル踏力(PF)はペダルに取り付けたストレインゲージで、クランク角度はクランクに取り付けたジャイロセンサーでそれぞれ計測した。また、外側広筋(VL)、大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)の形状変化量は、MCセンサー法を用いて計測し、各運動強度の10回のペダリング運動を分析の対象とした。 その結果、PF及び膝伸展筋群の形状変化量の最大値は、運動強度に伴い有意に高値を示した。PFの最大値出現時間は運動強度によって異なり、100Wに比べて300Wと400Wでは早期に出現した。膝伸展筋群における形状変化量の最大値出現時間は、VLとVMでは運動強度によって変化しなかったものの、RFでは運動強度が高くなるにつれて有意に遅延した。VLとVMの形状変化量に対するPFの比率は、運動強度に伴い高くなる傾向を示したのに対して、RFでは運動強度によって有意な変化は認められなかった。 以上の結果から、異なる運動強度におけるペダリング運動中の膝伸展筋群の活動特性と、ペダル踏力と形状変化量の比率は筋によって異なることが明らかとなった。
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